しっとりとした
日本情緒漂う小さな隠れ家で
手間を惜しまぬ
懐石コースと厳選した酒を味わう

お香の奥ゆかしい香りが漂う小さな玄関を靴を脱いで上がると、廊下の先にこじんまりしたカウンターが現れる。
古い建具や設えには古民家を思わせる雰囲気があるが、艶っぽい朱色のカウンターや機能性に富んだオープンキッチンが、それにモダンな彩りを添えている。
満席でも8名という親密な空間に降り立てば、日常を忘れてゆったりと寛げる。

「お料理はできるだけお客様に添うように考えています」
という店主の小野美勝さん。
内容はおまかせといっても、苦手な食材や食べたい料理のリクエストはもちろんのこと、ゲストそれぞれに寄り添う形できめ細かに対応している。
例えば「まずビール」というゲストには、揚げ物から提供するなど、献立の順序も臨機応変に。
お仕着せでなく、料理を楽しんでもらえることが最も大切なことなのだ。

オーソドックスな素材でも手法を変えるなど、工夫を凝らすことで食感ががらりと変わったり、意外に思える食材の組み合わせが新鮮な味覚を呼び覚ましたり、小野さんの料理には、時にハッとさせられる喜びが隠れている。
ストレートに食材の美味しさを表現しながらも、ここならではの味わいが、美食家たちの足をこの店へと向かわせるのだ。

「お客様に料理を美味しく召しあがっていただけるように努力するのは当然のことです。その上で居心地のいい店でありたいですね」
そのために空間からサービスまで、細やかに心を砕いている。
ゲストの会話を妨げない控えめな接客もそんな気配りのひとつ。
親しい人とゆるりとした時間を過ごせるからこそ、何度でも通いたくなるのだ。
お伝えいただければ幸いです。