ドクターラバー Vol.1

ドクターラバー:医者と結婚したい一般OL。出会い続けるための、ある法則

医者を好み、医者と付き合い、結婚することを目指す。

そんな女性たちを、通称「ドクターラバー」と言う。

日系証券会社の一般職として働く野々村かすみ(28)も、そのひとり。

彼女たちはどんな風に医者と出会い、恋に落ち、そして生涯の伴侶として選ばれてゆくのだろうか?

医者とドクターラバーたちの恋模様は、一筋縄ではいかないようだ。


ずっと恋焦がれていた、ヴァージンロードを歩く日。


重たそうな木の扉が、厳かにゆっくりと、開く。

正面のステンドグラスから差し込む光で一瞬目がくらんだ後、一気に視界が開ける。

かすみの目には、ヴァージンロードの両脇に並ぶ人々がこちらを見つめながら、一斉に拍手をくれているのが映る。

隣で組まれた父の腕が、わずかに震えている。緊張なのか、感極まっているのか。どちらだろうか。

扉の前で、かすみは父とともに、深々と一礼をする。そして、一歩一歩ふみしめるように、父と赤い絨毯の上を並んで進む。

ずっと、恋焦がれていたこの瞬間。けれど、現実になった今、意外にも頭の中はかなり冷静だった。

中ほどまで歩いたところで少し顔を上げると、目の端に、里帆が映った。目を真っ赤に潤ませて、嗚咽をこらえるように肩を震わせている。

―泣き虫なんだから。

かすみの顔に、思わず笑みがこぼれる。

そのまま顔を正面に向けると、光の先で、彼がこちらを優しく見守っているのが見える。

彼の目には、一点の曇りもない。穏やかな顔つきで、隣に並ぶのを待ってくれている。

かすみは彼に向かってほほ笑みかけながら、ふと、2年前のことを走馬灯のように思い出していた。

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