「待ち合わせは"東京"で。」新鮮な誘い文句であの人を大人の夜に連れ出そう

※こちらの店舗は現在、移転しております。掲載内容は移転前の情報です。

路地裏に灯る行灯が、風情ある入り口。

八重洲でサシ飲みならここ!しっぽりできるこだわりの名店『焼鳥 本田』

地元・大阪の高校の同窓会で、片思いだった彼女と再会して盛り上がり、「今度は二人で」と決まったのは先週のことだった。お互いの職場が同じ八重洲だと分かった途端、「飲もうよ!」とシンクロしたのは嬉しかった。

八重洲は美味い店が多いが、どうしても大衆的になりがちだ。男同士で一杯ひっかけるには最適なのだが、久しぶりの、しかも東京であか抜けた彼女と一緒なら、もう少ししっとりとした店がいい。

思いついたのは八重洲の裏路地にひっそりとある『焼鳥 本田』である。食通の先輩が「女性とサシで八重洲ならここ」と話したのを思い出したからだ。

「待ち合わせは東京で。」
分かりにくい場所なので、駅から一緒に行く事にしたのだ。八重洲口から歩いてすぐだが、注意しないと見逃してしまうほど細い径を入ったところに、この店はある。

サラリーマン達のガヤガヤとした喧噪が途絶え、二人の世界に入り込める場所である。

鶏も野菜も、絶妙な焼き加減の串たち。

「大阪から出てきてもう何年も経つんやもんなぁ…。さすが、ええ店知ってるやん。」
のんびりとした彼女の関西弁に、そうそうこんな感じだった!と懐かしい気持ちが込み上げる。

シラフの時のお互いの方がよく知っているという感覚は、大人になってからは経験しないので、なんだか照れくさい。彼女に少し緊張しているのがバレないよう、勢い良く生ビールで乾杯する。

『焼鳥 本田』は夜のコースが一つのみ。希少部位や一品、〆の食事は追加で注文出来る。歯ごたえを楽しめる程新鮮な比内地鶏の焼鳥はいたってシンプル。

それもそのはず、この店では”たれ”の串は一切無い。鶏そのものを楽しめるよう、部位ごとに塩、オリーブオイル、バルサミコ、山椒などレパートリーに富んだ味付けがされている。

こりこりのハツに手を伸ばしながら、突然彼女が可笑しそうに笑い出した。
「放課後にいつも出てた屋台で、甘いたれべったりの焼鳥、よう食べたん思い出したわ」
すっかり忘れていた思い出が彼女の言葉で鮮やかに蘇ってくる。

「それが今やこんな大人な焼鳥屋で、旨い酒まで飲んでなあ…」
気を許して笑顔で掛け合うことができる相手に、東京にいてこそ分かる、同郷という安心感をひしひしと感じる。

カウンターのほかに、小さなテーブルと小上がりのあるこじんまりした店内。

「反対側やけど、丸の内の方から駅舎を見て帰らへん?」

彼女ともう少し一緒に居たくてそう誘えば、いいなぁ!と明るい声が帰ってきた。地方から出てきた人間にとって、暖かいオレンジの光に照らされた駅舎は、しみじみと感慨深い。

八重洲と丸の内、全く違った空気感を見せてくれる東京駅は、やっぱり面白い場所であり、同郷の彼女と歩けばより一層魅力的に映るのだった。

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