南麻布に彗星のごとく現れた最先端中華!『龍吟』出身の若き天才シェフが放つ料理を堪能あれ!

"蚕豆扇貝" 粗く潰しながら葱油で炒めた空豆がミソ。さっと火を入れた帆立貝と合わせ、上海の家庭料理に川田流の洗練を

"蝦子紅喉魚"(赤むつの焼き物 江南の香り)。玄米おこげのクリスピーな歯応えと赤むつの身のふっくらした食感は、炭火で焼けばこそ

これらの品々が、最初は少量づつ、音楽で言えばピアニッシモで始まり、徐々にクレッシェンドしていくコースの流れは感動的だ。一品目の“しいたけ茶”は、いわば椎茸のビスク。アミューズ的に一口頂いた後、“くらげ”から“帆立とそら豆”までは、食感、味の濃淡、スパイシーさなどを組み合わせながら、フレンチのムニュデキスタシオンの如く次々と卓に運ばれる。

一口、二口で終わってしまいがちな料理の余韻を引き延ばしているのが、ペアリングの妙である。それも、この店、ノンアルコールのお茶ペアリングが素晴らしい。(いや、もちろんアルコールペアリングもいいのだけれど)第一弾は、東方美人のスパークリング仕立てだった。

泡の中国冷茶ーそのシャンパンに似た色合いと香りは、まさにお茶のシャンパンといったところだ。その後も、白茶や台湾高山茶、時には日本の緑茶をも合わせつつ、コース全体で約8種類ほどが登場、舌を飽きさせない。

さて、前菜的な料理からちょっとヘビーなメイン的料理に移行する口直し的位置付けとして登場、喉を潤してくれるのが雉のスープだ。雑味なく澄んだスープは、雉丸ごと一羽分のエキスを抽出したもの。そこには、さりげなく和の要素も取り入れられている。

「旨味の底を支えるふくよかさが欲しくて昆布を少し忍ばせてみました」

和のアプローチは、それだけではない。“梅香豚の四川香り炒”“ふかひれ姿煮”とオーソドックスな中華の皿が続いた後に出された“赤むつの焼き物 江南の香り”は、赤むつに玄米のおこげを貼り付け、鎮江酢をかけながら炭火で焼いた一品。味つけは中華ながら、炭火焼という手法は、和食の世界で学んだ技術だ。

"脆皮鴿子"(窒息鳩の炭火焼き)胸肉と腿肉、それぞれの持ち味を最大限に引き出したスペシャリテ

また、小鳩の料理にしても、原型は広東の代表的な焼き物の一つ“脆皮炸乳鴿”(乳バト姿揚げ)だが、これを、川田流に再構築。胸肉と腿肉、各々の肉質の違いを考慮した上で、最も適した火入れをと考え、取り入れたのがやはり炭火焼。腿肉は、下味をつけてから一度茹で、麦芽糖を塗って一晩干した後、高温の油をかけながら焼く従来通りのセオリーを守る反面、ともすればパサつきやすい胸肉は、「60度と低温の油をアロゼする要領で鳩にかけながらロゼに仕上がるよう火を入れ、最後に皮目の方だけ炭火で焼いて香ばしさを出すようにしています」。

パリパリの皮から鮮烈な脂がほとばしるもも、カリっと焼き上げられた皮としっとりとした食感の胸肉。各部位の持ち味が巧みにひきだされ、思わず頬が緩む。

川田シェフが繰り出す料理の数々は、最後のデザートに至るまで入念に計算され、なおかつ一皿一皿が実に丁寧に仕上げられている。そして、それは、あくまでも中華。その範疇は超えていない。

和とのフュージョン料理と考えるのは、早計だろう。だか、その食後感は、不思議と『カンテサンス』や『フロリレージユ』といったいまどきのフレンチに近い。 そう感じるのは、私だけだろうか?

ティーペアリングは約8種のお茶が登場

Photos/Yosuke Suzuki, Text/Keiko Moriwaki

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