2017.03.21
SPECIAL TALK Vol.302020年のニューリーダーたちに告ぐ
「ココイチ」の愛称で親しまれている『カレーハウスCoCo壱番屋』。現在、国内に約1300店舗、海外に約160店舗を構え、その勢いはとどまるところを知らない。
創業者である宗次德二氏は、極貧の少年時代を経て不動産会社に就職。仕事のかたわら夫婦ではじめた喫茶店で飲食業の魅力にとりつかれ、29歳で「ココイチ」を創業。
「真心のサービス」を徹底し、一代で世界最大のカレーチェーンを築き上げた、その経営哲学とは? 次代のリーダーが生き抜くヒントがここに。
金丸:本日はお忙しい中、ありがとうございます。名古屋からお越しいただき感謝しております。
宗次:こちらこそお招きいただき、ありがとうございます。この対談を楽しみにしておりました。
金丸:宗次さんは、『カレーハウスCoCo壱番屋(以降ココイチ)』の創業者です。1978年の創業から瞬く間に日本一のカレーチェーンを作り上げ、53歳という若さで引退されました。現在は、どのような活動をされているのですか?
宗次:講演が多いですね。昨日も島根県の松江に行っていました。大したことを話すわけじゃないんですが、昨年は1年間で145回やったんですよ。
金丸:それは凄い。2.5日に1回という計算になりますね。引退後もお忙しくされている宗次さんに、今日は生い立ちから経営論、今後の生き方まで様々なお話を伺いたいと思います。
父に捨てられまいと必死に過ごした幼少期
金丸:早速、子どもの頃のお話をお聞きしたいのですが、お生まれはどちらですか?
宗次:石川県です。生まれたときに両親がいなかったので、3歳まで兵庫県尼崎市の児童養護施設にいまして、4歳のときに宗次姓の養父母に引き取られました。
金丸:どのような暮らしでしたか?
宗次:引き取られてしばらくは裕福でした。当時、写真館で撮影した家族写真があるんですけど、いい格好をしてるんですよ。でも、そのうち父が競輪にのめり込んでしまって。ギャンブル狂いってやつです。全財産をなくして、岡山の玉野市に一家で夜逃げしました。
金丸:いきなり壮絶なエピソードですね……。
宗次:母は父に愛想を尽かし、早々に家を出て行きました。だから私はずっと、父と二人で暮らしていました。日雇いの仕事をしていた父は、何かっていうとすぐ暴力を振るう人で、よく叩かれましたね。でも、私には父しかいなかったから、気に入ってもらえるように必死でした。「お父ちゃん、お父ちゃん」って。見捨てられたら困るっていう防衛本能が働いたんでしょうね。
金丸:その後は、どのような生活をされたんですか?
宗次:8歳のとき、母が名古屋にいることがわかり、父と一緒に母の元へ移り住みました。両親と私、六畳一間に3人で暮らしはじめたんですけど、それも長くは続きませんでした。父のギャンブル狂いが治らなくて……。結局1年も経たないうちに、私は父に連れられて、また家を出ることになりました。家賃が払えず追い出されるので、半年で家を転々とする生活をしていました。
金丸:そうなると、小さい頃は遊びがどうこうという環境じゃなかったですよね。
宗次:そうですね。でも玉野にいた頃も名古屋にいた頃も、近くに川があったので、よく魚を獲りに行っていましたよ。メダカやフナを獲っていました。
金丸:その頃は、自分の置かれた環境をどう思っていたのですか?
宗次:それが不思議と、自分が不幸だなんて思っていなかったんです。不幸だって思う余裕もなかったのかもしれません。よその家の子と自分を比べたりすることもなくて。
金丸:では、将来の夢とかはありましたか?
宗次:それは一切なかったです。
金丸:客観的に見ると、かなり大変な幼少期だったと思いますが、ご自身の中で生活が落ち着いてきたなと思うのは、いつ頃からですか?
宗次:中学生になってからですね。2年生のとき、友達に誘われてバレーボールをはじめたんです。弱小チームでしたが、みんなと一緒に練習するのがすごく楽しくて。バレーボールのお陰で生活に張りが出たというか、楽しく過ごせました。
金丸:その後は高校に進学されたのですか?
宗次:はい、商業高校に。高校1年の夏に父が亡くなりまして、母との二人暮らしが始まりました。六畳一間の小さい家だったけど、ようやく自分の居場所が安定したんです。でも貧乏には変わりなく、毎朝学校に行く前に、友達の家がやっている豆腐屋さんでアルバイトをして、学費や生活費を稼いでいました。
金丸:逆境にもかかわらず、たくましいですね。
宗次:「何事も誰にも頼らずに、一人で生きていかなければ」と小さい頃から思っていましたから。
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