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メニューによります:男の誘いを、メニューで査定する女。今宵の武器は“生ハムの王様”

市場価値MAX。「天使」と呼ばれる女、ひな子


ひな子は先月、27歳になった。

東京生まれで、商社に勤める父の仕事の都合で中学時代は海外を転々とし、高校から某有名私立校に帰国子女として入学した。大学はそのまま内部進学し、卒業後は外資系ラグジュアリーブランドでPRの仕事をしている。

出自にも恵まれているひな子であるが、何よりの武器は、その天使のような顔立ちである。

真っ白で滑らかな肌と、艶めく絹糸のような黒髪のショートボブ。黒目がちな大きな瞳は、自然とカールした豊かな睫毛に縁取られている。

ほんの少し丸みのある鼻筋とぷっくりとした唇は、美し過ぎる彼女の印象をほどよく和らげ、可憐な幼さもしっかりと演出してくれた。自分で鏡を覗き込んでみても、多くの者たちが賞賛するように、まさにエンジェルだ。

ひな子がイタリア製のシルク混のベージュのノースリーブニットを着ると、豊満な胸に調度いい具合の光沢ができる。しかし身体全体は小柄で手足はほっそりとしているため、決していやらしくはならない。

白いフレアスカートを合わせ、足元はルブタンで飾ろうか。

―ふふ、完璧だわ―

姿見の前で、ひな子はバレリーナのようにふわりと回転した。

「すべてを最高値で」というスローガンの元に繰り広げられる、劇場型レストラン


『ペレグリーノ』は1日6人限定、水・金・土・日の週4日のみ営業という、かなり希少な劇場型レストランである。

それは、調理からサーブといった対応を全て一人で行う、高橋隼人シェフの「すべてを最高値で」というスローガンの元に設定されたそうだ。予約が取りにくいのは、言うまでもない。

店は19時15分に開場、19時30分に一斉に料理がスタートする。

ひな子は心を躍らせながら、19時15分ぴったりに恵比寿の裏路地にある小ぢんまりとしたドアをくぐった。久保はまだ来ておらず、一番乗りだ。

ひな子の友人の中には、待ち合わせ場所に男よりも早く到着するなんて有り得ないという女が多い。だが、そんな些細な駆け引きに一体何の意味があるだろうか。

面倒な小手先のテクニックなど使わずとも、自分の価値は1ミリも揺るぎはしない。むしろ余裕を持って席につき、後からやって来た男をじっと観察してやるのが、ひな子の好むところだ。

その表情、緊張感、そして見え隠れする下心。

男のその日の心持ちは、数十秒も観察すれば手に取るように分かってしまうものである。

そして、久保が現れた。

艶の良い濃紺のロングコートを身に纏った彼は、「セレブ王子」の異名に似合う、自信に満ち溢れたオーラを醸し出している。

「姫、お待たせして申し訳ない」

困ったような甘い笑顔を浮かべた男に対抗し、ひな子は自慢の「エンジェルスマイル」で応えてやった。

この記事へのコメント

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No Name
このシリーズ好きだったな~続編希望
2018/01/01 12:309

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