靴と東京と私 Vol.1

靴と東京と私:ルブタンのレッドソールに宿るプライド。女の裏切りはいつの日も突然…

女のプライドを掛けた仁義なき戦い


二日酔いの頭を抱えてPCに向かいながら、昨日の美奈子の話を思い返す。仲良しの同期だと思っていたが、違ったらしい。いつの間にか、自分を踏み台にして、飛躍の時を虎視眈眈と狙っていたのだ。

「今日もそんな化粧っけのない顔して。だから沙織さんは老けて見られるのよ。」

わざわざデスクにやって来て、人の心の傷口に塩を塗るような愛子の発言に、更に頭が痛くなる。しかし愛子は何かを察していたようだった。


「自分のキャリアのために、人のことを蹴落としてでも上に行くのが女でしょ?」


本当にその通りだ...美奈子が悪いわけではない。
甘えていた自分が悪いのだ。

皆、自分の足で歩いている。しっかりと将来を見据えて、儚いながらも華奢なヒールで、時に人を蹴落としながらも上を目指して進んでいる。

「すみません、ちょっと抜けます!」

そのまま会社を飛び出し、クリスチャン ルブタンのお店へ走った。




—1ヶ月後。

ピンヒールの踵を鳴らしながら、大股で表参道を走っていた。

前の私だったら、楽なフラットシューズを選んでいた。でも、今の私はもう楽な方に逃げたりしない。

ピンヒールだとこの上なく走りにくい。派手に転ぶ可能性も高まる。それでも、このクリスチャン ルブタンの9cmピンヒールで東京の街を走り抜けたかった。

仕事をしていれば楽しいことばかりではない。でも敢えて茨の道を選び、嫌なことを蹴散らすくらいの力をこの靴は与えてくれる気がする。


—ライバルは誰でもない、自分。


東京の空を見上げながら大きく頷き、黄色のルブタンと共に階段を駆け上がった。

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

この記事へのコメント

Pencilコメントする

コメントはまだありません。

【靴と東京と私】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo