二子玉川の妻たちは Vol.9

満たされた妻は、起業などしない。誰も知らない、パーフェクト二子玉川妻の秘密

結婚は、女の幸せ。

そう考える種類の女にとっても、結婚は必要条件に過ぎない。

結婚しただけでは満たされない。女たちの欲望は、もっと根深いものだ。

夢だったおうちサロンをオープンした由美は、カリスマサロネーゼ・マリに対抗心を燃やす。

雑誌掲載のチャンスを掴んだことで、少しずつ知名度を高める由美。

そんな由美に憧れを抱くあかりは、しがないOLから脱したくて個人コンサルを受けることにしたのだが…?


進むべきは、どちらの未来?


月曜の午後。

『ザ・ラウンジ by アマン』に集うのは、「質素」とか「倹約」とかいう言葉とはおよそ無縁と思われる有閑マダムたち。

―ここは、別世界だ。

直通エレベーターで33階フロアに降りたあかりは、目前に広がる光景に眩暈を覚えた。

ハイブランドのバッグを傍に携え、優美な仕草でブラックアフタヌーンティーを愉しんでいる女性たち。彼女たちはいったい何者なのだろう。

まず間違いなく言えるのは、OLではないということ。

あかりは、今ごろ殺伐としたオフィスで、無機質なPCを前にインスタントコーヒーを飲んでいるであろう、部署の先輩たちを思い出し頭を振った。

どちらの未来に進むべきか。そんなもの、答えは明白だ。場違いに思える空間に、一瞬でも足を踏み入れるのを躊躇った自分が悔しい。

小さく息を吸い、ゆるふわ起業コンサルタント・小泉淳子に指定された場所、眩い光に包まれた「別世界」に、あかりは足を進めた。



「はじめまして。小泉淳子と申します。」

小泉淳子は、あかりを認めるとすぐさま立ち上がり口角をきゅっと上げると、握手を求めて右手を差し出した。

美しい女性だった。アメブロで見ていたそのまま。
姿勢よく凛とした立ち姿には、周囲をひれ伏させる存在感がある。あかりには、彼女の周りだけ光の粉が舞っているように輝いて見えた。

「小泉さんにお会いできるなんて、夢みたいです❤」

あかりは差し出された手を両手で包み、少しはにかんで、まっすぐな眼差しを向ける。

小泉淳子は、一瞬、その目線を交わすように下を向いたが、すぐに自信に溢れた表情を取り戻し、満足げに頷いた。

「こちらこそ。お会いできて光栄ですわ。」

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