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  • 東京トレンド娘 Vol.3

    東京トレンド娘 最終回:浮気疑惑のあった彼に結婚を意識させた、ある女性の一言


    「じゃあ、私は先に出るので、後はお二人でゆっくりどうぞ。お兄ちゃん、良い彼女みつけたね」

    そう言い残して由梨は先に店を出てしまい、美加と亮介は久しぶりに二人きりになった。

    二人きりになると由梨がいた時の賑やかさが嘘のように、沈黙に包まれてしまった。美加が声を出すタイミングを伺っていると、亮介の方が先に沈黙を破るように一度咳払いをした後、言葉を選ぶようにゆっくりと話し始めた。

    「食事会の件では、俺も怒りすぎたと反省してるよ。ごめんな、頭に血が上っちゃって冷静に話しを聞けなくて」

    「ううん、私の方こそ本当にごめんなさい。せめて正直に相談してれば良かった」

    まさか亮介から謝られるとは思っていなかった美加も慌てて謝り、ずっとひっかかっていたモヤモヤは一瞬で吹き飛んだ。

    「それにしても、さっきばったり会った時は本当にびっくりしたよ。美加、すごい顔してたよ?」

    亮介に笑いながら言われ、美加は自分の醜態を思い出してまた顔を赤くした。

    「もー言わないでよ!」

    「あはは、ごめん、ごめん。でも由梨もはしゃいじゃってごめんな。あいつ普段からテンション高いのに、いつもの3倍くらいになってて、うるさかったよな」

    「そんなことないよ」

    そう言って笑うと、亮介は少し真面目な顔で切り出した。

    「なんかさあ……」

    言葉を区切りながら、言いにくそうに口を開く。その態度に、美加は良くない事を想像して少しだけ構える。

    「え、何……?」

    「いや、なんだか、美加と由梨が楽しそうに話してる姿が自然で、家族みたいだなって。こんな未来もいいかもなって思っちゃったよ」

    満足そうに、柔らかな表情で美加を見つめながら亮介は言った。

    ―え、未来?家族?それって……?

    「いつかホンモノにしようね」と言って渡された指輪が、美加の右手薬指でキラリと光った。

    ―ホンモノになる日が、本当に近いのかもしれない。

    そう思うと、美加の心臓が大きく波打った。

    この時、美加に急な心境の変化が訪れた。2つのコーヒーカップと亮介の手元を写真に撮り、インスタにアップすることにしたのだ。

    今まで、男性の影は一切排除していたインスタだが、亮介とのことは出してもいいなかと思えたのだ。

    暖かい雰囲気がでるよう色を加工し、いつものようにハッシュタグを沢山並べた。

    「#cafe #happy #幸せ #まさかの出来事勃発 #でも雨降って地固まった」

    そして一番最後は「#仲直り」で締めくくられていた。

    (おわり)

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