東京グラマラススカイ Vol.1

東京グラマラススカイ:“無難な人生”が結局一番?体裁を気にして野心を見失った31歳

アキ29歳・何もかもが欲しいお年頃


「アキちゃん、あの案件どうなった?」

木曜日の午後4時過ぎ。六本木一丁目にある『ドットコスメ社』のWeb広報をしている私は、本当に毎日忙しい。でも、このキラキラと華やかな会社にいる自分が嫌いではなかった。

「今対応中です。明日までには上がってくるかと。」

「いいね〜さすがアキちゃん、仕事が早くて助かるわ。あ、でもちゃんとメイクはしてね。一応、うちの会社のブランディング的にも必要だから。」

すみません、と小さな声で謝った。上司・さとみさんの背中を見送ってから、慌てて自分の顔をチェックする。お昼休みから3時間以上経っている。

「化粧が崩れていても仕方ないじゃないか!」

やってもやっても終わらない仕事。そこに加えて連日のお食事会。29歳の女子は、結構忙しい。夕方になれば化粧も崩れて当然だ。


—アキ、今日のお食事会、外苑前の『アビス』になったから、宜しくね。—

化粧直しをしている最中に、同僚・優子からLINEが来た。思わず笑みがこぼれる。携帯に入っている“行きたいお店リスト”の中でも、『アビス』は特に行ってみたかったレストランの一つだ。

—いいチョイス!今日の相手、経営者だっけ?楽しみだな♪ー


良いレストランにも行きたいし、素敵な人とも付き合いたい。そしていつか、Web広報としてカリスマ的存在になって有名になり、自分で会社を立ち上げたいとも思っている。しかし、昔優子に自分の夢を語ったら笑われてしまった。


「アキってさ、本当に“グリード”だよね。」


優子の言い放った言葉が未だに胸に引っかかっている。成功したいし、何もかもを手に入れたい。でも、“みんな一緒が素晴らしい”と幼い頃から学校で教え込まれてきたこの世代。大きな夢を見て、将来の希望を語ることは、もはやタブーなのだろうか?

それ以来、優子にはあまり将来のことを語れなくなった。またバカにされるのも嫌だったし、自分の夢を高らかに謳ったところで、誰も振り返らない。


東京は、皆人に対して無関心で、欲望を抑えているようにしか見えない。
でも、本当はみんな隣の人が気になって仕方ないはずだ。だってそれが人間だから。

この記事へのコメント

Pencilコメントする

コメントはまだありません。

【東京グラマラススカイ】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo