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  • 負けられない女たち Vol.3

    負けられない女たち:自分が好きな男or自分を好きな男。どちらを選ぶのがオンナの幸せ?

    頼樹とケンカする数日前・・・


    「最近なんか、雰囲気変わったわね。女子力上がったんじゃない?」

    職場のデスクで、昼食の『デリフランス』で買ったサンドイッチを頬張っていると、社内でもっとも面倒見が良いと評判の先輩、広畑に言われた。

    「え、そうですか?」

    とぼけてみたものの顔が緩むのを抑えられず、久美子は素直に照れた。

    「実はおうちサロン、略してうちサロを始めたんです。」

    「へぇ~、何それ?」

    食いついてくる広畑に、久美子は丁寧に説明した。

    いつものヘアケアにパンテーンのトリートメントチューブを使うだけで、家にいながら、まるで“サロン体験”をしたかのような、ワンランク上の艶やかな髪が手に入る。

    この「うちサロ」は、久美子のような多忙な女子には心強い味方のような存在なのだ。


    「今では立派な“うちサロ女子”になりました!」

    久美子が大げさに言うと、広畑も楽しそうに笑ってくれた。

    奈緒の存在を意識し始め、美容はもちろんファッションにも力を入れるようになった久美子。自分が変わっていくのを実感できるのはやはり嬉しい。髪が綺麗になり、それに合うメイクをしたくなったら、次はメイクに合うファッションを楽しみたくなった。通勤はパンツ派だったが、最近はスカートの登場も増えたほどだ。

    自分の変化に1番驚いているのは久美子自身かもしれない。おしゃれを楽しむという感覚を思い出したら、毎日に少しだけメリハリも出た気がする。

    「おやおやおや」

    広畑と盛り上がっていると、満面の笑みを浮かべた山代がいつもの口癖と共に現れた。彼は敏腕マーケターで、こうして話に入ってきては後輩いじりを楽しむのだ。

    久美子が美容の話で盛り上がっていることを伝えると、
    「だったら、加圧トレーニングがおすすめだよ」と一言。

    「でも、山代さんトレーニングの効果でてませんよね?」そう言って山代のお腹に目線を移すと、彼は笑ってその場を去ってしまった。

    「今日はあまりいじられなくて良かったぁ。あ、じゃあ私これから外出なんで。」

    広畑に伝えて、バッグを掴みエレベーターへ走った。


    エレベーターに乗ると、山崎奈緒を筆頭にした秘書軍団が乗ってきてしまった。奈緒は久美子の前に立ち、綺麗にブローされた髪が目の前にふわりと現れた。

    ―またわざとらしく。いちいち自己主張してこないでくださーい……。

    久美子は冷めた目で奈緒の髪を見つめた。

    エレベーターを降りる際、奈緒が目線をばっちり合わせたまま「それでは」と言ってきた。唇を固く結んだまま口角だけをキュッと上げていたが、その瞳は決して笑っていない。

    何かを含んだような不敵な笑みが、久美子の心をざわつかせた。



    その日の夜、仕事を終えて一人で駅まで歩いていると、後ろから走ってくる足音が聞こえた。足音が止まるのと同時に「西尾!」と名字を呼ばれ、振り返ると同期の岡田がいた。

    岡田は同じ営業をしているが、不定期に開かれる同期会で会う以外はあまり接点のない男だ。だが、今日の彼はなんだか様子が違う。

    「西尾、最近雰囲気が変わったって噂だぞ」
    「え、何それ。それって良い意味?悪い意味?」
    「もちろん良い方だよ。綺麗になったってみんな言ってるよ」
    「まじですかー」
    「俺から言わせれば、今さら気付いたのかって感じだけどな」
    「え?」

    思いがけない言葉に驚いて、並んで歩く岡田の顔を見ると、彼はとびきりの笑顔を向けてきて、久美子を一瞬ドキリとさせた。

    「なあ、今度デートしようよ。二人で美味いものでも食べに行こう。」

    それは、岡田から突然の誘いだった。

    Pantene

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