崖っぷち結婚相談所 Vol.1

崖っぷち結婚相談所:美貌とキャリアを手にした女の哀しいプライド。そして、その本音。

美貌とキャリアを手にした女。しかし、それでは満たされない女心


杏子はプライベートの不調は否めないが、仕事は大好きで楽しいし、やりがいも感じている。そして周りからは、美貌とキャリアという、天が二物を与えた女だと崇められることはしょっちゅうだ。

しかし、他人の目には華やかに映るかも知れない杏子の生活は、実は寂しさに満ちていた。

一人深夜に仕事を終え帰宅し、真っ暗な部屋に電気を付けるとき。何の予定もなく、ジムやエステに行って一人帰宅し、簡単な料理を作って寝るだけの単調な休日。

天が与えてくれたかもしれないその二物だけでは、結局心の寂しさは埋まらない。

「結婚」という形にこだわるわけではないが、夫という一人の男に愛され必要とされ、そしてプロポーズされる女たちが杏子はただ羨ましかった。

自分はどうしてそういった存在になることができないのか。そんなことを考えると、心の柔らかい場所が何かにグサリと刺されたように痛む。

しかしこんな弱音を他人に吐く事は、杏子のプライドが許さなかった。自分の弱い心を守る唯一の術は、みずきと同じように「結婚を敢えて選ばない自分」を装うことだった。そうすることで、寂しく惨めな自分と向き合わずに済むのだ。


「聞いてよ。会社の38歳の女の先輩がね、急に電撃婚をしたのよ。突然どうしたんですかってコッソリ聞いたら、実は結婚相談所に登録して、そこで婚活に励んでたんだって。それってよっぽど困ってたのね。私には信じられないわ。」

みずきと波長を合わせ、杏子は高らかに笑ったが、頭の中では冷静にアンテナが動いていた。

―結婚相談所なら、その先輩みたいに誰にもバレずに要領よく結婚できるの...?

杏子は帰宅後、仕事さながらにネットで結婚相談所の調査を始めた。まずは資料請求だ。とにかくいくつかの業者から資料を取り寄せ30分ほどデューデリジェンスすれば、おのずと相場が分かるはずだ。

天が二物を与えた女が、夜中に一人結婚相談所のウェブサイトを物色するなどという光景を冷静に考えると、また杏子の哀しいプライドが疼いた。

いや、でも誰にもバレなければいいだけだ。誰にも内緒でコッソリと事を進めればいい。杏子は邪念を振り払い、思い切って何件かの資料ボタンをクリックすることに成功した。

-次回、杏子はとうとう結婚相談所に足を運ぶ...?!

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バブル全盛期を知る大人たちが、究極の社交場を目指して作り上げたのが、この『1967』。バーカウンター、テラス、個室、そしてカラオケも完備し、様々なシーンに対応可能。夜な夜なお洒落な大人たちで埋め尽くされるこの空間を、貴方も感じてみないか?

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

この記事へのコメント

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No Name
この頃の連載めちゃくちゃよかったなー
2020/05/04 11:254

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