エスケープ・ハワイ Vol.1

エスケープ・ハワイ:東京で疲れ果て辿り着く楽園。30歳、3ヶ月の現実逃避の先にあるもの

「頑張れ」と言われないハワイの空気感


東京の重圧と見えない壁から抜け出したくて、逃げるように来たハワイ。

ハワイなら多少日本語も通じるし、何度か訪れているので安心だ。そして何より、 何か吹っ切らせてくれる気がして、すがる思いで来たと言う。とりあえず長期滞在者用のコンドミニアムを探し、スーツケース一つでやって来た。

「ハワイに来て、いっぱい空気を吸うようになりました。」

そう言って少し恥ずかしげに優見は笑う。

東京にいた時は忙しさと窮屈さから、深呼吸することも忘れていたそうだ。毎日ただ殺伐と過ぎていき、気がつけばあっという間に1日が終わっている。

しかしハワイに来て、久しぶりに1日の長さを楽しんでいる。朝日と共に起き、ワイキキビーチ沿いをランニング。午前中はヨガに行き、午後は今回ハワイに来てから始めたサーフィンに挑戦している。

たった二ヶ月前のことだが、 胸が締め付けられるような目に見えない不安と苦しさと戦っていた東京での日々が、今では遥か昔のことのように感じられるという。


離れて初めて見えてくるもの


「仕事も恋人も、何か大事なものを見失っていた気がします。もっと自然体でいいんだなって。」

仕事に対しても彼氏に対しても求めるものが多過ぎた、と言う優美。関係性が進まない彼氏に苛立ち、 手一杯になっていた仕事に対して一人で立ち往生していた。

社会人になって以来、初めてこんなにものんびり過ごしている間にすっかり性格も穏やかになったそうだ。

ハワイのゆっくりと流れる空気の下でただ海を眺め、気ままに過ごしている間に自分らしさを取り戻しつつあると言う。

毎日が必死だと、自分を見つめ直す時間もない。他人に優しくできる余裕もない。

ダイヤモンドヘッドからは人を癒す力を、そして海からは生きる活力を貰えたという。優美にとって必要だったのは、ゆっくりと自分と向き合う時間だった。

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