東洋経済・東京鉄道事情 Vol.20

満員電車はこの方法で回避ができる!?電車の混雑予測が進化したぞ!

この3路線は極端な例だとしても、ただでさえ混雑している朝の時間帯にオリンピック観戦客が乗車したらどうなるか。現在、都心のホテルは不足気味。観戦客は首都圏の各地にあるホテルに宿泊し、そこから都心の会場にやってくる。

現在の混雑率に単純に8%が上乗せされただけでも混雑度は増すのは間違いない。朝のピークに競技をぶつけるのは避けたいところだが、朝の時間帯が海外でテレビ観戦する際のゴールデンタイムになるケースもあり、簡単にはいかないだろう。

問題はまだある。観戦客が宿泊地から目的の会場にたどり着くまでには何回か乗り換えが必要となる。つまり東京、新宿、渋谷といった大規模駅は通常より10~20%利用者が増えるという。「しかも混雑に慣れていない観光客が駅構内を右往左往すると、大混乱が起きかねない」と、田口教授は懸念を示す。首都圏の鉄道はネットワーク化されている。どこか一つの駅で生じた混乱は、首都圏全体に伝搬しかねないのだ。

利用時間を30分ずらすだけで大違い

ではどのような対策をすべきなのだろうか。田口教授は、「会場へのアクセス駅をできるだけ分散して周辺の駅から歩いてもらう。あるいは早めに会場に来てもらうといったことを周知するしかない」という。たとえば国立競技場や東京体育館の最寄り駅は千駄ヶ谷だが、新宿など周辺で下車して会場まで歩いてもらえれば、混雑は相当改善する。

観戦客に不便を強いることになるが、そこは不便を逆手に取る逆転の発想が必要だ。「たとえば、早めに会場に来てもらった観戦客向けにイベントを行なったり、周辺の駅から歩く観戦客向けには物販を行なう。きちんと準備すればビジネスチャンスにもなる」(田口教授)。

大規模駅の混雑については、通常客のほうで利用時間をずらしてもらうなどの対策が考えられる。田口教授の勤務先である中央大学理工学部は東京ドームの近くにある。「野球やコンサートの終了と帰宅時間が重なると駅が混雑して大変な思いをする。事前にわかっていれば、帰宅時間を30分ほどずらして、普通どおりに帰宅できる」。

こうした対策は鉄道会社単体でできるものではないし、直前に対策を出したところで、それが周知徹底されるには時間がかかる。できるだけ早く都、あるいは国を挙げた取り組みが必要だ。世界中の目が東京に注がれている中で混乱が起きたら、日本の鉄道イメージが失墜しかねない。

著者
大坂 直樹 :東洋経済 記者

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