東洋経済:投資の真実 Vol.1

洋服を買うのも投資!?金融資産だけでなく自分への投資で将来の資産増加

さらにこうした行動バイアスのひとつに「若い人ほどリスクが取れない」というのもあります。これは、若い人ほど相場が急落すると投資をあきらめてしまう比率が高いという実験結果から言われていることです。実際にイギリスではこの行動経済学の知見を用いて、企業年金でのリスク配分を20代向けには低めに設定して、相場の急落で資産価値が大きく減らないようにしているほどです。もちろん30代になるとリスクを高めに取るようにして収益率が高くなるように考えられています。

投資理論では長い投資がいいことはわかっているのですが、人の行動をコントロールする心理的な部分では20代はまだその投資に耐えられないということですから、新入社員の皆さんも無理に金融資産に多くの資金をつぎ込まずしっかりとした距離感を持つことが必要だと思います。

ひと儲けを狙うのは「投資」ではなく「消費」

もちろん、だから投資をしなくてもいいということではありません。どう投資をするかが大切なのです。投資する対象は「金融資産」だけではないのです。支出、消費、投資の関係を「おカネを使うこと=消費+投資」という、単純な表現で考えてみたいと思います。おカネを消費に使うか、投資に使うか、の違いに分けるというシンプルなものですが、消費とは何か、投資とは何かの定義がカギになります。

たとえば、洋服を買うことは消費でしょうか、それとも投資でしょうか。普通は消費ですよね。でも商談をまとめようと思っている時の「決めのスーツ」を買うのであれば、これは自分の武器になりますから、「投資」かもしれません。この一着で将来のお給料にも影響が出ますよね。

それでは英会話のレッスン代は、どうでしょう。英語を習得して海外との交渉に役立てようと思っていれば、それは自分に対する「投資」ですよね。
資産運用はどうでしょう。一般的には「投資」でしょう。でも若い人ほど「ひと儲け」を狙って「投資」をするという人が多いのですが、そういう人にとってそれは「投資」ではなく「投機」=ギャンブルと映っているはずですから、「消費」と言えます。

こうした事例を重ねてみると「消費」と「投資」を区分する定義がみえてくるように思います。私は「その成果が後になって出てくるもの」を「投資」と考えています。スーツを“買った時の喜び”が主眼なら「消費」ですが、それを勝負服に選ぶことで将来の自分のステータスアップを期待するなら「投資」です。資産運用も目先の儲けを狙うなら「消費」ですが、10年先、20年先の「資産増加」に価値を置くのならまさしく「投資」です。

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