東洋経済・東京鉄道事情 Vol.3

山手線vs京浜東北線、"並行競走"の勝者は?

ただ、こうした数値は設計上のもので、実際の運行時は乗車率や電圧などの状況に左右されるので、実際には大きな違いがあるわけではない。それに田端~品川間は駅間距離も短く、有意な差が出るとは思えない。となれば、この走行性能だけでは山手線も京浜東北線も、それほど大きな違いがあるとは言えないだろう。

ここまで来ると、もはやどちらも差はないのでは…と思えてくるが、車両の違いはさすがにそれなりの意味を持つ。それは、“安全性”だ。

そもそもE233系はE231系を発展させ、さらに安全性を高めたものとして設計されている。そのため、安全性を考慮すれば、明確にE233系、つまり京浜東北線のほうが優れているのだ。

大差ないとはいえ、安全性や快適性は車両が新しい京浜東北線が上だ


具体的には、まず二重化設計があげられる。E233系以降のJR東日本の車両では、伝送装置や保安装置など主要な機器はいずれも二重化されている。つまり、何かが故障をしてももう片方が生きている限り、車両は走り続けることができるというわけだ。この二重化(冗長化)は航空機などでも採用されており、今や安全設計の基本中の基本だ。

さらに、車体の強度も向上しており、特に側面の衝撃への強度はE231系から約10%も向上している。もちろんそうそう事故が起こるとは思えないが、それでも安全を考慮してどちらかを選ぶなら、迷うことなくE233系の方が優れているということになる。“何かあっても死にたくない”と思うあなたは、ちょっとホームで待つことになっても京浜東北線を選ぶべきなのだ。

さらに細かい点で言えば、縦方向の揺れを軽減する軸ダンパの採用、ホームと車両との段差が約2cmほど低い設計など、E233系には優れている点が少なくない。“後継車両”なのだから当たり前なのだが、安全性や快適性を求める限りは、京浜東北線なのである。


座れる確率では山手線に軍配


ただ、田端~品川間の乗車区間は最大でも27分程度。全区間を通して乗るという人はさらに少ないと思われるし、乗車時間は平均でせいぜい10分程度といったところだろう。さらに、山手線は11両編成なのに対して京浜東北線は10両編成。定員も山手線のほうが200名ほど多い。ラッシュアワーはともかく、そうでない時間帯なら山手線のほうが幾分空いている可能性が高いとも言える。

実際に夜間、21~22時台に何度か利用してみたが、山手線は短い乗車区間(例えば神田~新橋など)で降りる人が多いのに対して、京浜東北線は長く乗る人が多いという傾向もあった。となれば、定員の多さも相まって、座りたいなら山手線、ということになりそうだ。E233系京浜東北線の乗り心地がわずかにいいとはいっても、座れるなら山手線を選ぶ…というのも悪くない選択だろう。

【東洋経済・東京鉄道事情】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo