東洋経済・東京鉄道事情 Vol.3

山手線vs京浜東北線、"並行競走"の勝者は?

まずは、時刻表から見てみよう。

京浜東北線が快速運転を行っている10~15時台を除いた時間帯で、それぞれの運行本数を比較した。すると、田端から品川へ向かう列車では山手線が229本、京浜東北線が197本となった。

時間帯別で見ると、朝晩のピーク時はほぼ変わらないが、ピークを外れると山手線の運行本数のほうが明らかに多い。特に夜19時台以降では、山手線が21時台まで1時間18本を維持しているのに対して、京浜東北線は15本→13本→13本と本数を減らしている。

本数では山手線が京浜東北線に大きく差をつけて勝っている


つまり、多くの利用者が山手・京浜東北の選択のポイントにしている“早く来る方”という点で言えば、本数が多い山手線の方が“便利”ということになる。実感としても、夕方以降17~18時台の利用が多い人は“どちらも同じくらい乗っている”という感覚、19時台以降の利用が多い人は“山手線中心”という感覚を持っているかもしれない。

ちなみに、さらに詳しくダイヤを見てみると、山手線と京浜東北線、並んで“競走”しているような印象もあるが、同じ時刻に同じ駅を発車するダイヤになっているケースは意外と少ない。18時から18時30分までを見ると、いずれも10本ずつ運行しているが、田端駅出発時間はすべて異なっている。

途中駅や品川駅の発車時間が同じ時刻になっている例もあるが、これは1分未満(秒)を丸めているためで、ダイヤが乱れないかぎりは“どちらかが先にホームに到着する”ことになる。“同時”がないならやはり迷う余地なく“来た列車”に飛び乗るべきなのだ。


車両では京浜東北がリード?


では、他には選ぶべき“決め手”はないのだろうか。ちょっとマニアックにはなるけれど、続いては“車両”の違いで考えてみよう。

現在の主力車両は山手線がE231系500番台、京浜東北線がE233系1000番代となっている。そもそもE233系はE231系の後継車両として開発・製造された経緯があるから、車両のグレードという点では確実に京浜東北線が山手線を上回っていることになる。

なお、山手線では昨年11月末の営業運転初日にトラブルを起こして以来、営業運転を取りやめていた新型車両E235系が3月1日から再び運転を開始するが、ここでは考えないでおくことにする。

まずは走行性能。営業最高速度はいずれも車両の設計最高速度に関わらず90km/hに制限されており、さらに同区間を走るのだから、これを比較しても意味がない。むしろ重要なのは、起動加速度と減速度だ。この起動加速度と減速度は、必ずしも新型のほうが優れているわけではなく、線区の特性などを考慮して決められる。京浜東北線のE233系1000番台では起動加速度2.5km/h/s、減速度が5.0km/h/s。一方の山手線E231系500番台では起動加速度が3.0km/h/s、減速度は4.2km/h/sだ。

車両としてどちらが優れているということではないが、このデータから見れば加速性能は山手線、減速性能は京浜東北線に軍配があがる…ということになる。ほぼ同時に同じ駅を出発すると、まず山手線が先行するが最終的には京浜東北線が追いついて次駅にはほぼ同時に到着…という光景をよく見るのは、こうしたそれぞれの車両の特徴が影響しているのかもしれない。

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