2016.03.05
月曜:肉×”ガブのみ”ワイン、火曜:お洒落焼肉×ワイン、水曜:モダン焼き鳥×ワイン、木曜:ステーキ×ロゼワイン、金曜:新店で味わう王道の極上肉×ワインと、肉×ワインの特集を行ってきた今週。
今日は1980年代初頭、空前のグルメブームからおよそ30年余り、肉とワインが紆余曲折を経て市民権を勝ち得た軌跡を一気に振り返る。
まずは80年代から見ていこう!
80年代後半:フレンチとバブルで芽生えたワイン人気
「一億総グルメ」と呼ばれた80年代後半。
赤玉ポートワインでもなく、あの昔懐かしい藁包みのフィアスコボトル製〝キャンティ〟だけではなく、本格的にワインを味わおうという気運が一般にも芽生え始めたのは、80年代。フランス料理ブームに火がつき始めた頃ではなかったろうか。
折しもこの時期、フランスでの修業を終えた料理人たちが続々と帰国。街場にフランス料理店が次々とできていった。『オーベルジュ ド ブリクール』の斉藤元志郎シェフ(現『旬香亭』)、『ビストロ・サカナザ』の三國清三シェフ(現『オテル・ド・ミクニ』)etc.。それまではホテルやグランメゾンでしか味わえなかったフレンチの裾野が少しだけ広がり、それに伴いワインの認知度も徐々に高まっていったような気がする。
そしてまた、牛、豚、鶏以外にも仔羊や鴨といった旨い肉が色々あることを、私たちに教えてくれたのもフランス料理だった。やがてバブル景気と共に、ボジョレーヌーボーが大ブーム。今思えば、それほどまでして?という向きも多いだろうが、まだまだワインを飲みなれない初心者が多かった当時、ある意味ジュースのように飲みやすく、軽いタッチのワインは入門編としてはピッタリだったのだろう。ところが、ここでフレンチに強敵が現れる。俗にいう〝イタ飯ブーム〟の勃発である。
火付け役は、元祖ボナセーラ店『イル・ボッカローネ東京』と『カルミネ』。この二軒だろう。中でも衝撃的だったのは、ボッカローネの〝ビステッカフィオレンティーナ〟。骨付き肉の雄姿に歓喜したのは私だけではなかったはずだ。名店『トゥリオ』もビス テッカが評判だった一軒だ。短角牛もあか牛も世に出る前のこと、欧州の牛と黒毛和牛との質の差に苦労したシェフも多かった。
91年、バブル崩壊が始まると、輸入ワインの価格が下落。関税も引き下げられ、それまで高嶺の花だったワインに手が届きやすくなっていく。
90年代初頭:バブル崩壊とともにワインが身近に&豚ブーム勃発
一方肉業界では、この時期、博多『万十屋』の六本木店開店を皮切りに〝もつ鍋〟旋風が吹き荒れる。フィーバー自体は1年余りで沈静化するが、それまでの〝もつ=ゲテモノ〟のイメージがこのブームで幾分緩和されたのは事実だろう。
91年、牛肉の輸入自由化で焼肉業界も活気づく中、メキメキと頭角を現してきたのが、〝豚肉〟。白金豚に平牧三元豚、アグー豚etc.数々の銘柄豚が市場を賑わし、豚自慢のレストランが話題を呼んだ。
この豚ブームには第1次と第2次、二つの波があったように思う。最初に脚光を浴びたのは日本の銘柄豚。その庶民性から、牛肉に比べて一段格下に見られていた豚を、一躍檜舞台に立たせた功労者は、目黒のイタリアン『バッチョーネ』の小島史朗シェフと六本木『ブーケ ド フランス』の井本秀俊シェフのふたり。
小島シェフの作る豪快な豚のTボーンステーキや井本シェフが繰り出す多彩な豚料理に、豚肉の真の旨さと実力に開眼。ブームに拍車をかけるように銘柄豚が巷に溢れ、豚料理専門店も登場。
旨い豚肉を求めて客が訪れるようになり、やがて舶来の豚に目が向けられていく。チンタセネーゼやビゴールといった外国の豚が美食家らの舌を唸らせたのだ。
これが第二波。この豚ブームの影には、21世紀を迎えた直後、食肉業界を襲ったあの〝BSE問題〟の影響がある。
2001年にはEUから、さらに2003年には米国からも牛肉輸入禁止という非常事態に。日本でも2001年に発生。消費者の牛肉離れが急速に進み、廃業に追いこまれた焼肉店も少なくなかった。人々の関心はより豚にシフト。2002年には、豚に特化したフランス料理店『ローブリュー』も青山に誕生し、豚肉の市民権は不動のものとなる。そしてやがてイベリコ豚の一大ブームへと繋がるのである。
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