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  • シンガポール・ラブストーリー Vol.1

    シンガポール・ラブストーリー:34歳・失恋女、傷心のひとり旅で思わぬ恋の予感

    近場のアジアの都市への旅は、日常のストレスをふり払う最高のリフレッシュに。なかでもシンガポールは、東京では体験できないダイナミックなレストランや夜遊びスポットが揃う大都会だ。

    一方、アジア経済圏のハブとしてグローバル企業の進出が相次ぎ、世界各国のビジネスマンの出張機会も多い。

    2016年で日本との外交関係樹立50周年を迎え、ますます日本においても注目すべき国となったシンガポール。このお話は34歳独身・梨花に起こった、予想外のトラベル・ラブストーリー。

    34歳・失恋女、シンガポールの地に降り立つ

    早朝5時半にチャンギ国際空港に到着すると、8時間ぶりにLINEを開く。新規メッセージを伝える振動が、手のなかでいつもより強く震えるように感じた。未読は計30件。すべて女友達4人によるグループLINEでのよもやま話だ。健二さんからの返信は、やっぱりなかった。

    今回のシンガポール旅行を企画したのは、同僚で親友の真希だった。ふたりとも同じ女性雑誌の編集部で働いていて、34歳と年齢も同じ。当月号の締め切りを終え、会社を2日間休むことにした。水曜の仕事のあとそのまま羽田に行き、23時の便でシンガポールへ。木金は会社を休み、シンガポールの華やかな週末の夜を女同士で楽しみ、日曜日の夜に帰国する3泊4日のプラン。

    寒い東京を抜け出すためでもあったけれど、一番の理由は私が健二さんのことで落ち込んでいたから。それで真希が「いまの梨花は見てられない!」と誘いだしてくれたのだった。

    テレビ局のプロデューサーの健二さんと初めて会ったのは去年の夏で、もう8ヶ月前になる。お食事会で出会いすぐに意気投合。そのあと男女の関係になるのにも、そう時間はかからなかった。すごく久しぶりに好きな人ができて、私は舞い上がっていたのだ。

    始めのころは3日に1回くらい健二さんから電話がかかってきていたし、私がほぼ毎日出すLINEにも返事をくれていた。月に1〜2回は会い、ただペースは完全に向こうのものだった。会えない週末に相手が何をしているのかは謎だった。

    やきもきする気持ちを避けるには、「好きです」とか「つき合ってください」とクリアにすればよいのだけれど、やっぱりそれはできなかった。34歳のオンナの「私とつき合ってください」は、オトコにとっては「結婚を前提に」という言葉もセットで聞こえるに違いない。それに数ヶ月経っても恋人と言い切る自信がない時点で、彼への告白は終わりを意味している気がしていた。

    曖昧な関係のまま月日はどんどん過ぎ、日が経つにつれ健二さんからの連絡も滞るようになった。こちらから誘っても週末は予定があると言われるようになり、今年はまだ一回しか会っていない。

    今年のバレンタインデーは日曜で、思い切ってもう一度食事に誘ってみたけれど、「日曜日は終日、仕事になるかも」という返事だった。“かも”に一抹の望みをかけ、チョコレートは買ってしまった。若いころはどうでもよかったバレンタインが、この歳になってからの方が重くのしかかる。そのチョコレートはいまも冷蔵庫で眠っていて、扉を開ける度に資生堂パーラーの華やかな包が目に入る。

    それ以来、私は手も足も出せなくなり、向こうからもまったく連絡はこない。行きつけのワインバーのマスターにその話をすると

    「ああ、いま流行りのフェードアウトじゃないですか!」

    まるでウイルスのように言われ、聞けば似たような話をする女性客が私で3人目なんだとか。やんわりと遠ざかっていき、いつか無になりおしまい。一度かかったら治す術はなかなかない。

    シンガポール便の出発直前、3週間ぶりに送ったのが、

    「元気ですか?私はいまからシンガポール旅行に発つところです」

    というLINEだった。なんとか明るく見せようと、飛行機のスタンプもつけた。本当なら「行ってきまーす!」と言いたいけれど、それは恋人の台詞みたいで、この状態じゃ言いたくても言えなかった。そして、それが既読スルーのまま、今に至る。

    「シンガポールでぱーっと遊んで気をとりなおそうよ!毎日バッチリお洒落とメイクして!」と意気込んでいた真希は、なんと出発5日前にインフルエンザにかかり渡航を断念。「超ごめん!ホテル代は半分だすから、行ってきたら?」と言ってくれたので、初めてのシンガポールをひとりで旅することになったのだ。

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