2017.02.20
ローストビーフは、どこか優しい。肉汁を湛えて柔らかなビロードのような薄切り肉には、がっしりとした塊肉のステーキや、スタミナ満点の焼肉にはない、包容力のようなものすら感じる。
ここではひととき、そんな魅力を紐解いてみよう。店の名物として人気が高い絶品ローストビーフをご紹介。
※こちらの店舗は現在休業中です。
素材選び、焼き方…etc.その味わいには理由がある『ラ ブラスリー/帝国ホテル』
1890年(明治23年)開業。昨年125周年を迎えた日本を代表するグランドホテルといえば、『帝国ホテル』だ。その長い歴史を彩る“食”のトピックとしては、シャリアピンステーキや、ブフェスタイルのレストラン「バイキング」を生み出したことが有名だが、もうひとつ忘れてはならぬのが、ローストビーフ。
現在、館内の『ラ ブラスリー』と『インペリアルバイキング サール』で供されているこの料理もまた、帝国ホテルの伝統を彩ってきた。歴史を遡ると明治天皇の誕生日を祝った晩餐のメニューにも「ロース牛肉」という名でその存在が記録されているほどだ。
ホテル内のレストランに於いてメインディッシュを代表する料理、に位置づけられているだけに、素材選びから気が抜けない。ブッチャーシェフの村野哲司氏によると、「『ラ ブラスリー』のローストビーフには、USリブロースを使います。色が鮮やかで、持った時にハリのあるものを選び、一晩の水抜きと丁寧な掃除の後、厨房へ渡します」。
ブッチャーから届いた肉を仕上げるのは、シェフの八坂繁之氏。「塩をしっかりと打ちフライパンで焼き目をつけたら、しっとりとした食感を損なわぬように低温のオーブンで、肉にストレスをかけずに焼くのがポイントです」。そして、サーヴする際に約1cmの厚みにカットするのは、ソースがよく絡むようにという配慮から。長い歴史が紡いだ逸品には死角なし、である。
肉自慢なバーガーショップの見逃せないサイドメニュー『ブラッカウズ』
黒毛和牛100%のパティでおなじみのハンバーガーショップ『BLACOWS』。が、ハンバーガー以外のサイドメニューが、意外と言っては失礼だが、かなりの充実度を見せているのをご存知だろうか。
和牛ミートソースのマカロニグラタン、和牛クリームコロッケなど、ずらり“肉祭り”状態。そしてその中に燦然と輝く“ローストビーフ”の文字を発見! かくしてご紹介するのがご覧のとおりの見事なローストビーフだ。
焼いてから休ませ、クレソンとともにコールドミートとして出されるのだが、味が落ち着いており、焼きたてにはない美味しさが感じられる。肉を食べたら野菜もね、という意味でぜひお供におすすめしたいのが、後ろにあるクレソンとパクチーのサラダ。
自家製のキノコオイルや、散らした松の実、カリカリに焼いたベーコンの風味が食欲をそそる。合間に葉野菜を食すれば、和牛の旨みがより深まるというものだ。
老舗ビストロに登場した意表をつく逸品とは『ビストロ・ド・ラ・シテ』
東京のレストラン史を語る上で欠かせない、東京で、いや、恐らく日本で一番長い歴史を持つビストロである。
が、最近じわじわと人気が高まりつつあるのが、このローストビーフ。オーナーの関根進氏が惚れ込んだA4ランクの飛騨牛を使ったひと品だ。「A5でもA3でもなく、A4が良かった。赤身の味わいと脂のバランスがちょうどいいんだね」
9代目のシェフである江畑雄一氏は、塩をした塊肉の表面をしっかり強火で焼いて焼き色をつけた後、高温のオーブンに短時間入れては7~8分休ませる、という工程を繰り返す。回数はあくまで「肉の様子を見ながら」で、肉の弾力から内部の状態を察しつつ、見事なロゼ色に仕上げる。
まずは何もつけずに1切れ、で肉のポテンシャルを感じてほしい。思わずワインに手が伸びる。
昭和の銀座の活気を伝える老舗ビヤホールの名コンビ『ビヤホールライオン 銀座7丁目店』
創建は1934年。店内に一歩踏み入れば、当時の雰囲気を残す、重厚な石造りの内装に圧倒されるはず。国内に現存する最古のビヤホールとしても名高いこの店には、“ビール注ぎ名人”が注ぐ生ビールと名物のローストビーフという、鉄板の組み合わせを心待ちにする人が大勢いる。
ローストビーフの提供は、1日2回の焼き上がりに合わせて行われ、すぐに売り切れることも多いとか。肉には塩とこしょうを多めにすり込み、8時間ほど寝かせて馴染ませ、遠赤外線オーブンでじっくりと火を通す。すっと噛み切れる柔らかさだが、しっかりした塩気ゆえ、ビールとの相性はいわずもがな。
気になる焼き上がり時間は、月曜から土曜なら午後5時と7時半、日曜・祝日だと午後3時と5時。こんな最高のコンビを味わえるなら、スケジュール調整も苦にならない。
この記事で紹介したお店
ラ ブラスリー/帝国ホテル 東京
ブラッカウズ
ビストロ ド ラ シテ
ビヤホールライオン 銀座7丁目店
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