名店のお燗番直伝!酒の旨味が格段にUPするお燗のつけ方

セロリピクル酢。富士酢と千鳥酢をブレンドして漬けた自家製

主役は上質な日本酒 お燗番が待つ酒亭
燗酒嘉肴『壺中』

熱過ぎず、ぬる過ぎず。丁寧に温められた米の雫が、優しく胃の腑に染み渡る。舌を捉えるのは、醸された米が内包していたふくよかな味わい。

日本酒は熱を加えることで、冷えた状態では伺い知れぬ豊かな表情が浮かび上がる。

燗酒の愉悦を知る人にとって、居心地のよい酒場は思いのほか少ない。良い日本酒があってもお燗で飲めるのは種類限定だったり、つける温度が好みでなかったり。

「ならば自分たちで店を作ってしまおう、ということになりまして」。『壺中』を切り盛りするのは、番頭の神田實祐さんとお燗番の伊藤理絵さん。 店舗物件すら白紙なのに、まずは銅製の特注お燗器を手に入れたという。

メニューに載せるのは4蔵の酒。 蔵元に足を運び、味を確かめ、造る姿勢に共感できたものに限定する。仕入れた酒は常温で保存。

「開栓して、呑み頃を見計らってからお出ししています」と伊藤さん。 日本酒は要冷蔵、開栓後は、すぐ飲み切るべしという“常識”は、かつての吟醸酒全盛時代に定着したもの。 生酛を始め、しっかりとした造りの純米酒は、空気に触れることで秘めた素質が徐々に花開くのだ。

黒毛和牛コンビーフ。爽やかなディジョンマスタードを添えて

「あくまでも日本酒が主役ですから」と、神田さんが用意する料理はいわゆる“酒のアテ”。

吟味された品々は、左党のツボにぴたりとはまる。京都の建築家が手がけた、簡素で気品溢れる空間。作家ものの酒器。骨董の器。店の隅々に「酒を通して和の文化に触れて欲しい」という神田さんの美意識が宿る。

入口に、看板はない。だが、店内にお燗番あり。そして、日本酒の深遠なる世界も――。

小鮎のたいたん。鮎は琵琶湖産で山椒風味

蛸の燻製。ほのかな甘みと燻香が後を引く

(左)日置桜/山根酒造場、(右)睡龍/久保本家酒造

小さな蔵の良質な酒を常温保管で飲み頃に

店で提供するのは『睡龍』『竹鶴』『日置桜』『辨天娘』の4種が中心で、それぞれ純米や純米吟醸、生酛などのバリエーションを揃える。

「どの蔵元にも共通しているのが、質の高い酒を醸すための努力を惜しまないこと。造りがしっかりしているからこそ、常温保管すると熟れて、深みがでるんです」。

(左)辨天娘/太田酒造場(右)竹鶴/竹鶴酒造

例えば辨天娘は開栓してすぐ飲むと渋みが際立ってしまう。

「酒質に合った飲み方を正しく伝えるのも、酒とお客様を繋ぐ私たちの務めだと考えています」。

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

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