いきなり握りから食べたい貴方へ贈る、握り重視の王道の鮨屋8選

物言わず、味わって欲しい握りがある。食せば、それだけで分かり合える究極の握りだ。鮨には、人を幸せにする力が宿っている。

左上から時計回りに、穴子、小肌、まぐろ、星鰈、車海老、春子

後世に伝えたい江戸前の技と心意気
『銀座 ほかけ』

今日来て、明日もまた訪れたい。そう思う鮨屋に、久々に出合った。言わずと知れた江戸前鮨の名店、銀座『ほかけ』である。

創業は昭和12年。戦後23年に三田から銀座へと移転、昭和27年に建てられた宮大工の手になる旧店には、舗政財界の大物を始め山田五十鈴、三船敏郎など往年の銀幕のスターらも足繁く訪れていた。

そんな名うての食通達の舌を唸らせて来たのが、今なお矍鑠(かくしゃく)として鮨を握るご主人、矢㟢桂氏その人だ。名古屋で修業後、25歳でここ『ほかけ』に入り、先代に腕を見込まれ、3代目を継いだほどの天才肌である。

星鰈のお造り

「三越裏再開発計画」により、古き良き昭和の面影を残していた旧店は、'07年、惜しまれつつ閉店。だが多くの常連客のラブコールに応え、翌年復活。昭和通り沿いに新店舗を構えた。

木曾檜の一枚板のカウンターに、ほかけ船が描かれた短い暖簾の掛かる庇や屋根など旧店から持ち込んだ設えが往時を偲ばせる。無論、伝統と革新の技が光る鮨の旨さに一分の隙もない。

昔ながらの大ぶりな握りは、いたずらに酢飯が主張することなく、身にたっぷりと旨味を含んだ肉厚のネタと絶妙のバランスを見せる。ダイナミックにして繊細な味わいはまさに『ほかけ』の真骨頂。中でも白眉は小肌。江戸前鮨の老舗と聞けば、塩と酢をがっちりときかしたそれを思い浮かべがちだが、さにあらず。〆加減も軽やかで、実にふっくらとしているのだ。

頬張れば、何処か鯔背(いなせ)な小肌特有の香りが口中いっぱいに広がり鼻腔をぬける。ただ闇雲に江戸前鮨の伝統に固執するのではなく、常に現在の鮨のあるべき姿を念頭に置いて仕事をする。老練にして洒脱。それが矢㟢氏の鮨の魅力かもしれない。

因みにここでは、お任せではなくお好みが基本。初めてならまずはお決まりから始め好みを追加するといいだろう。

カウンター前のネタケースの下には、氷が敷いてあり、ネタが乾かないよう配慮されている。手前の鰯も旨い

毎朝6時30分には築地へと足を運び、自ら納得したものだけを仕込む

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