男という生き物は、一体いつから大人になるのだろうか?
32歳、45歳、52歳──。
いくつになっても少年のように人生を楽しみ尽くせるようになったときこそ、男は本当の意味で“大人”になるのかもしれない。
これは、人生の悲しみや喜び、様々な気づきを得るターニングポイントになる年齢…
32歳、45歳、52歳の男たちを主人公にした、人生を味わうための物語。
▶前回:「まだ俺に色気はあるか…?」結婚20年、45歳男が21万円の高級ニットを購入したワケ
Vol.6 銀座の夜、閉店後のレストランで…
飲食店経営の52歳、五味慎之介の場合
「おひとり様ですね、どうぞ」
平日のランチ時。
久しぶりに銀座のフレンチのホールに立った僕は、良質なサマーセーターを着た男性を店内へと招き入れた。
テーブルの空き具合を横目でチェックするも、おかげさまで店内はほぼ満席だ。
なかなか恰幅のいい男性だったから少し心配ではあったけれど、数席残っていたカウンター席へと案内した。
― 大丈夫かな。カウンター席はお客さまには少し窮屈かもしれないけど、ゆっくり楽しんでいただけるだろうか。
この店の自慢は、なんといっても素材の良さだ。
新鮮な野菜や魚介は全て、その日の朝に市場で買い付けたもの。その時期に一番美味しい旬の素材を厳選し仕入れるよう徹底している。
さらにはその最高の素材の魅力を余すところなく引き出す、確かなセンス。
まだ32歳と若いながらに本場フランスで学んだ三隅シェフが、素朴で温かみのあるフランスの家庭料理に仕立てるのだ。
都内に3店舗、伊豆と長野に2店舗のレストランを経営する僕だが、この銀座のフレンチはその中でも一番のお気に入り店舗だ。
自画自賛するようだけれど、ここより美味しいフレンチは他にはないと思う。
主戦力はもちろんディナーだけれど、より多くの客に気軽に自慢の料理を楽しんでもらいたいという想いで、数年前からこうしてランチも始めている。
― 今のお客さまは、どうやら初めてご来店いただいたようだけど…気に入っていただけたかな?
他の客へのサーブの合間を縫って、先ほどの男性へ目を配る。
けれどそこで見た光景は、僕にとってあまり嬉しいとは思えないものなのだった。
この記事へのコメント
いやー、お里が知れるわ。グルメぶって「ランチも妥協出来ない」とかどの口が言ってるんだ? 汚なく食べたり平気で残す奴が美食家ぶってるの、恥ずかしい。
減価率ではなくここでは原価率ですね。