変わりゆく東京、進化するグルメ 「東京美食エリアガイド」 Vol.1

『渋谷』
“大人仕様”のダイニング Part1

さまざまなカルチャーが横溢し、街の表情を刷新し続ける渋谷の街。
抗うのではなく流れに身を任せ、大人が憩えるダイニングへ向かおう。

「カトリーヌ・メミのミニマリズムの世界観が好き」と、オーナー。ロランド夫人らの写真も飾られる

クレープリー ティ・ロランド

CREPERIE Ti ROLANDE

ブルトン人のソウルフードが松濤の地で熟成し、さらなる進化の予感。

東急文化村から松濤方面にかけてのエリアに、いつからか、フランスのエスプリ漂う店が点在するようになった。中でも今年7月にオープンした『クレープリー ティ・ロランド』は、独特のインパクトを放つ。

そう、この店との出合いは、ゴダールの『勝手にしやがれ』を初めて観たときに覚えた、軽い困惑と陶酔に似ている。

フード業界ではタブー視される黒×白のモノトーンの、あまりにシックな設え。オープンキッチンで立ち働くシェフは、若く、ハンサムな上、聞けばガレットとクレープの生まれ故郷、ブルターニュ出身だという。サーブするのは、モデル並みに美しい金髪の女性――。

「1937年創業、パリ最古の歴史を誇るクレープリー『ティ・ジョス』の3代目経営者、生粋のブルターニュ人でもあるロランド夫人によるプロデュース」という謳い文句は見掛け倒しではないのか? あまりに調いすぎた条件の舞台に、ふと懐疑的になったりもする。

左.ノルディック¥1,700。サーモン、アーティチョークのコンビ

右上.リンゴと塩バターキャラメルのクレープ¥1,100、シャンティイクリーム¥250

右下.バラ色の人生¥1,400。バラ香のクリームにストロベリーシャーベット

ところが、手さばきよく焼かれた「ガレット・コンプレット」が運ばれるや、目玉焼きの見事な半熟具合や匂い立つ生地に、思わず食指が動く。熱々を頬張れば、力強い蕎麦の香りが鼻腔を抜け、豊かな風味が口一杯に広がる。蕎麦粉、水、塩だけで作られるガレットが、こんなにも滋味深いとは!

「長野の研究所で『ティ・ジョス』のガレットの粉を分析してもらい、国内の蕎麦粉で近いものを組み合わせてはロランド夫人の下へ運んで何度もチェックを受け、ようやく、これなら、と許しが出ました。当店のは、全粒粉に近いですよ」と語る代表の服部周裕氏は、元デザイン会社の経営者。20年ほど前から本格的なクレープリーを日本に紹介したいという構想を持っていた。

機が熟したと準備に入った頃、フランスの友人にロランド夫人を紹介される。「商売気のない方で、ガレットやクレープの奥義を徹底的に伝授されました」。それは、運命的な出逢いだったのだ。

左上.甘辛のシードル2種のほか、洋梨の発泡酒も用意

左下.28歳でシェフに就任したジュリアン・トクセ氏はクレープリーを開くのが夢だったという父の意思を継ぐ

右上.ソファのような寛ぎ感をもたらすチェアは、イームズのレプリカ

右下.ハム、グリエールチーズ、目玉焼きの伝統的なガレット・コンプレット¥950

BGMは決まって、ハープの音色が美しいアラン・スティヴェルらによるケルト音楽。これもバグパイプ奏者としての顔を持つ『ティ・ジョス』3代目、ロランド夫人の夫の見立てによるもの。スタイリッシュな空間で聴けば、郷愁と同時に新しさが響く。黒×白は、ブルターニュの旗の色、塩辛くて黒いガレットと、甘くて白いクレープを象徴する色ともいえる。

ブルターニュ土着の郷土料理は、渋谷の空気に触れて洗練され、だが、しっかりと伝播されていた。


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