女はつらいよ。 〜女子会は、甘くて苦い〜 Vol.2

『pignon(ピニョン)』にて、同期女子と憂さ晴らし女子会

キーボードのエンターキーを叩く音にさっきから隣の席の後輩がびくっとしている。だけどこの怒りを押さえられない。どうしたらいいのだろう。つい1時間ほど前、部長から、前日終電ギリギリまでかかって仕上げた企画をフロアに響き渡りそうな声でこき下ろされたのだ。

ダメ出しされるならまだ分かる。皆の前で言う事ないじゃないか。(部下をダメにするハウツー本には、怒るときはマンツーマンでと書かれてる!)

大きな溜め息をついたとき、Facebookにメッセージのポップアップがついた。背中合わせに座っている先輩のアヤコさん(32)からだった。「今日夜飲みに行こうよ。智ちゃんも誘ってさ。いい感じのビストロ見つけたんだ」智ちゃんとは、同じ部署の同期・智子である。

アヤコ先輩が選んでくれた神泉のビストロ『pignon』に3人の女が集まった。

近くにはワインバー『アヒルストア』などの人気店も多くあるエリア。道路に開放的に開かれた店内は街と一体化していて、平日なのに満員で賑わう。こういう街と一体化しているビストロはあるようでない。

「ここのサーモンのキッシュは絶対食べなきゃダメ。ポーションが大きくてびっくりするかも。それに、アボガドのサラダね。パクチーが隠し味になって病み付きになるよ。あと、スパークリングのボトル入れちゃおう」

メニュー数は多くないけれど、どれも魅力的で迷ってしまうが、アヤコ先輩がちゃきちゃき頼む。ボリュームが多いので、二人だと食べられる種類が少なくなってしまうから、ここに来るのは3人以上のとき、と決めているとアヤコ先輩は言った。

ワインが来ると、3人の女は乾杯した。

「今日は部長のご機嫌、特段に悪かったね。でもね、部長が怒ってるの実は理由があって・・」

苦笑いしつつ、アヤコ先輩が意味ありげな顔で言った。

「二人は今年で5年目でしょ。実はプロジェクトリーダーとして、他部署から引き抜きの打診があるのよ。」

アヤコ先輩が言った想定外の言葉にびっくりして智子と顔を見合わせた。

「新プロジェクトは、F1層つまりあなた達のような女性をターゲットにしたキュレーションサイト。誰をリーダーにするかということで、今白羽の矢があなたたちに立っているそうよ。」

全社注力で新サービスを立ち上げるという噂は聞いていたがまさか私たちが・・・

「部長はあなたたちを大プッシュしていてね。きっと来週、責任者会議にて最終決定になると思う。だからこそ、抜擢の裏付けとして、アウトプットの精度を極限まで高めようとしているのよ。」

アヤコ先輩の言葉に、腸煮えくり返っていた気持ちが一転、涙腺が緩む。

アヤコ先輩が優しく微笑む。

「二人とも、明日から更に部長の指摘は厳しくなるわよ。気合入れて、さぁ食べましょう!」

先輩がお薦めした料理はどれも、びっくりするほどのボリューム。スパイスが隠し味に効いていて他にはない味わい。部長の不器用な愛情が嬉しくなって、ついついグラスが進む。それでいて3本のボトルを空けて苦しくなるほど食べても一人7,000円!

翌日は3人揃って始業時間30分前に仕事を始めていた。

部長のお叱りもなんのその!


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