2024.09.03
美食家にだってフランクに食べたい夜がある。そんなときに選ぶのが、アラカルト和食の酒場だ。
作り手の顔が見え、気軽だけど、しっかり美味しい。しかも、旬のグルメにありつけて、何よりホッとできる。
いわゆる“美食おじさん”がたどり着く、東京都内にある究極の酒場がこちら!
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【美食おじさん】
限りある胃袋だから、もう旨いものしか食べたくない
予約困難店の枠を複数持ち、重鎮ゆえ仕事の会食も多い。
そんな美食を愛する大人がプライベートな日に羽を休めるのが、港区界隈のアッパーな酒場。肥えすぎている舌を存分に満たす、最高峰のクオリティーを誇る店たちだ。
素材も腕も一流のアテを気ままにつまみ、大いに語る。美食おじさんが向かう先には、美酒美食が待っている。
新店取材に、クライアント様への接待など夜はガチガチのコース料理っていうのが日々の生活。ありがたいこと、ではあるのだが、時として無性に酒場が恋しくなる。
刺身の盛り合わせにお浸し、そしてちょっとした揚げもの――で、心置きなく麦焼酎のソーダ割を楽しむ、それこそが人生の楽しみですらある。
住む街、三宿あたりにもいい酒場はあるのだが、私が読者の皆様にお薦めしたいのは『田中田 西麻布店』である。
西麻布交差点から外苑前方向にかなり行かないとたどり着けない隠れ家的酒場。さすがは港区で、お値段は張るし、内装も豪奢そのもの。
まだまだ私は、ここを気兼ねなく楽しむことはできないが、ただメニューを広げ好きなものを頼む瞬間は、何にも代え難い。「マグロトロカツ」の美味さたるや。
周りを見渡しても、会食に疲れた!?イケオジたちが気取らずに飲み、笑顔が絶えない。
その光景が素敵過ぎて、今特集をやろうと決意した次第であります。酒場ってやっぱり最高っ!
気楽だけど、砕け過ぎないのも大事。そんな絶妙な酒場を手駒に持つ
目黒・権之助坂にスナックや飲食店が所狭しと並ぶ名物ビルがある。そんな誰もが知る場所に、ひっそりとした隠れ家のような店を知っておくのが、大人の甲斐性というもの。
『目黒それがし』の、木の引き戸を開けると、店内は意外にも広く、漆喰の壁やゆったりとしたカウンター、テーブル席などが目に入る。
「僕自身、会食がないときは気軽に行けて、普通に美味しいものが食べられる店が欲しかったんです。肌感覚でそう思って作ったのがこちらの店です」と話すのは代表の尾山 淳さん。
メニューは創作系和食ではなく、大人が満足できる定番の一品がずらり。
奇をてらわず、焼き物には毎日おこした炭火が使われ、鮎の塩焼きには手間のかかる蓼酢(たでず)がいちから作って添えられている。
「米沢牛炭火焼き」¥4,180。
A5ランクのシンタマ4部位のうち、ひとつを日替わりで提供。この日は赤身に程良い刺しが入るシンシンの部位。
そんなメニューに遊び心として加えられているのが“太巻き”というのも丁度いい塩梅。
鉄火巻や煮穴子といった定番にプラスして、この春からは豪華絢爛な「太巻きデラックス」が登場。つまみにも〆にも、お土産にもなると話題だ。
お酒も豊富で、ワインはクラシックもナチュラルも両方充実。
さらに日本酒はオリジナルで造った銘柄もあるほど。この包容力がくつろぎをくれる。
手塩にかけた最高の逸品を好きなように頼める幸せ
時間に縛られず、その日に食べたいものを好きなように味わいたい。そんな時に覚えておきたい一軒が赤羽橋『宮わき』だ。
いま、食通の間でも話題のお店で、数あるアラカルトから自分仕様の献立を組み立てる醍醐味をここなら存分に味わえる。というのも、そのアラカルトメニューが半端では無いからだ。
甘鯛若狭焼きや牡丹鱧のお椀といった正統派の割烹料理からアジフライやイワシ梅煮のようなお惣菜的一品までレパートリーの幅広さは圧巻!ご主人・宮脇健太さんの力量が窺える。
「いまなら加茂茄子や鱧など旬の味を核に、ハシリや名残の食材を取りいれるようにしています」と語る。
王道の味にさりげないひと工夫を加味した品々が秀逸。飽きのこない美味しさが持ち味だ。また、自家製山椒タルタルなど酒が進むつまみも充実。
「天然鮎の炊き込みご飯」¥3,500。
鮎は高津川産。米一合半に対し、鮎は3尾を使用。三枚におろし、その骨でとった出汁で炊いている。
酒は日本酒はもとより、ブルゴーニュを中心にワインも豊富。
ここならワインに合わせて料理を選ぶ逆ペアリングも楽しめそうだ。
量にも柔軟に対応してくれる懐の深さに何度も訪れたくなる
中目黒の山手通りを、不動前方面へ。通り沿いにさりげなく佇むのが、割烹『楽食ふじた』だ。
初見のゲストがまず驚くのが、巻物のようなアラカルトメニュー。店主・藤田敏行さんの手書きによるもので、達筆さに驚くが、それより100品近くあるというから驚愕。
よく見ると値段が書いていないのだが、その理由は一品ごとに量を調整してくれるから。
「お客様は、食べたいものがたくさんあるので、できるだけ量を調整させてもらっています。たとえばですが、刺し身を数種類ひと切れずつでも大丈夫です」と藤田さん。
食材には天然うなぎや毛ガニなどの珍しいものや、ぐじや賀茂茄子など修業先の京都にちなんだ食材が毎朝、豊洲で仕入れられている。
「いいものを見つけると、つい買ってしまいます。他のお店で出すより、うちで出したいですからね」と豪快に笑う。
店主の人柄も楽しく、どんなワガママにも笑顔で応えてくれる頼もしい一軒だ。
懐かしき家庭の味に思わずただいまと漏れ出る
カウンターに大皿のおばんざいが並び、美人女将が切り盛りする店とくれば、そこは癒やしのパラダイス。しかもそれが六本木通り沿いの西麻布にあるのだから、奇跡というほかない。
おばんざいの向こうで忙しく立ち働くのは、『飯処 角と』の女将・副島仁瞳恵さん。
ちゃきちゃきとした福岡美人で、常連さんからは「元気がもらえる」と評判だ。
実はこの店、副島さんが叔父の遺志を継いで、博多にあった同名の人気店を復活させ、西麻布に出店したという。
博多の店と同様に豊富なアラカルトメニューを用意し大皿スタイルに。
炭火を使った炉端焼きや鉄鍋餃子も評判となっている。
また“飯処”を謳っているだけあり、〆の一品も充実。釜飯、丼、うどん、焼きそばがあり、おにぎりはお土産にもできる。
「うちの店のテーマは愛。お肉や海鮮、野菜をバランス良く食べて欲しいですね」と副島さん。
博多時代は朝までハシゴ酒していたほどの酒好きのため、店内の酒も種類豊富。常連にも喜ばれている。
中でもワインはクリュッグやオーパス・ワンが手頃な価格になっており、西麻布のツボがしっかり押さえてある。
港区を根城にする大人にとって、これ以上ない最高の止まり木なのである。
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