2024.03.29
“DINKS”という言葉を最近、よく耳にするようになった。あえて、子供を持たない夫婦のことだ。
だが、年齢を重ねていくうちに、心変わりし、子供が欲しいとなった場合、どんな選択肢が残されているのかを知っておくことも大事ではないだろうか。
今回は妊活を7年間続けた経験を持つ女性に、“妊活”とは一体どういうものなのか、その実態を伺った。
取材・文/風間文子
子供はそのうち…30代前半までは仕事も恋も充実した日々
夫婦の5組に1組――。
この数字が何を意味するのか、貴方はおわかりだろうか。
国立社会保障・人口問題研究所の「第15回出生動向基本調査」では妻の年齢が50歳未満の初婚夫婦(5,334組)を対象に不妊治療経験の有無を調査している。結果、不妊の検査や治療を受けたことがあると回答した夫婦の割合は全体の18.2%を占めた。
つまり5.5組に1組の夫婦は不妊という悩みと向き合っているということになる。
さらに対象を子供がいない夫婦に限定すると28.2%、3.5組に1組の夫婦が今も不妊の検査や治療を続けているか、あるいは努力の甲斐なく子供を諦めているという現実がある。
得てして、当事者になるまで自分が不妊で悩むとは思わなかったという男女の声は多い。
今回取材に協力してくれた犬山恭子さん(仮名、47歳)も、そうした一人だ。夫となる男性とは新卒で入社した大手出版社で出会う。俗にいう職場結婚であった。
「夫を男性として意識するようになったのは入社7年目、私が28歳のときでした。
それまでの夫の印象はというと、一言でいうとチャラ男で最悪でした。だけど時間と共に、彼が単なるチャラ男ではないことに気づきました。
当時は女性の外見や好みで接し方を露骨に変える男性が多い時代でしたが、夫は相手が誰であっても分け隔てなく接する人だったんです」(犬山さん)
相手の意外な一面を垣間見て関心を持つと、その後も気になってしまうのが人の性だろう。
彼が一本の鉛筆さえも大切にするような性格であることを知った犬山さんは、瞬く間に夢中になり猛プッシュしたという。やがて同僚に隠れて2人で過ごす時間が増えていく。
犬山さんにとって、まさに恋も仕事も充実した日々だった。そして2011年に起こった震災を機に2人は結婚し、同時に新居も購入した。犬山さんは36歳になっていた。
「編集者としての仕事が多忙ということもあり、それに愛犬もいて、たとえ子供がいない生活であっても満足していました」(同)
ここまでなら連載小説『なんとなく、DINKS』と似た世界観といえるかもしれない。
一方で周囲には不妊治療を経て出産する同世代の友人もいた。
「彼女からは、子供を産むなら、そろそろ真剣に考えた方がいいとアドバイスされました。
ある日、何気なくその話題を夫に話したんです。ちょうどそのとき、彼はNHKの『産みたいのに 産めない~卵子老化の衝撃~』というドキュメンタリー番組を見た後だったようで、いずれは子供が欲しいと打ち明けられました。
それならばと夫婦で子作りを、と意識しはじめたのですが、あいにく私が会社を退職してフリーの編集者になったばかりの時期だったこともあり、なかなか余裕もできない」(同)
気がつけば犬山さんは39歳になっていた。その年に――。
「飼っていた愛犬が亡くなったんです。もともと重い病気を患った子だったので覚悟はしていたもののショックは大きくて、私は喪失感で体調を崩してしまいました。
その時に服用した抗生物質が原因で外陰腟カンジダ症を発症してしまい、婦人科にかかったんです」(同)
診察を受けたとき、彼女は担当した女医に軽いノリで「そろそろ夫婦で自然妊娠による妊活をと考えているが、大丈夫でしょうか?」と尋ねたという。
すると女医は「妊活を甘くみるんじゃない」と叱咤し、すぐにでもレディースクリニックに行きなさいと促したという。
そこから犬山さん夫婦にとって、長く険しい不妊治療との闘いが始まる。
『なんとなく、DINKS』とは別の、もうひとつの世界がそこにはあった。
不妊治療の現実とは!?気になる本編はこちらから>>
【本編では、以下の内容が語られる!】
1.ある日、いきなり突きつけられる不妊治療という現実
2.まだまだ終わらない、不妊治療という負のスパイラル
3.不妊治療の先にあるのは「幸せ」か「絶望」か
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