SPECIAL TALK Vol.100

~違う自分に会いたいからこそ積み上げたものを崩し、新境地を目指す~


「一回きりの人生」スカウトを機に芸能界に飛び込む


金丸:ところで、中村さんが芸能界に入ったきっかけは何だったんですか?自分から?それとも、スカウトされて?

中村:最終的に決めたのは自分ですが、きっかけはスカウトですね。最初は高校生の頃だったんですが、親も賛成していなかったのでその時は縁がありませんでした。その後、大学生になってまたスカウトされたことが直接のきっかけになりました。渋谷の焼き鳥屋さんでアルバイトをしていたときです。

金丸:焼き鳥とお酒がお好きということでしたが、アルバイトまでされていたんですね(笑)。2回もスカウトをされたわけですから「私は芸能界でもイケる」という自信もめばえたんじゃないですか?

中村:いえ、私は子役の経験があるわけでもないですし、学生時代にタレント活動をしていたわけでもありません。大学では他の学生と同じように飲み会にも行っていましたが、授業と部活が中心でしたから。華々しくスターダムを駆け上がるような感じではなくて、自分としては、長い時間、普通に過ごしてきたと思っています。それに、両親は賛成してくれないだろうな、という思いもあって、ちゃんと就職活動もしていました。

金丸:就職活動もされていたんですね。将来の職業について、どんなイメージを持ってたんですか。

中村:親は銀行とか保険会社とか、安定した企業に入ってほしかったみたいです。でも個人的にはキャビンアテンダントに憧れていましたね。キャビンアテンダントが主人公だったドラマ『やまとなでしこ』の影響だったかと(笑)。

金丸:ミーハーですね(笑)。

中村:でも、私が就職活動をしていた頃はちょうど就職難で、キャビンアテンダントは特に正社員で採用されるのが難しい状況でした。それで、「普通に就職するのが厳しいなら、一回きりの人生だし、芸能界にチャレンジしてみたい!」と切り替えました。

金丸:中村さんが就職活動をされていた時期はちょうどリーマンショックの頃ですね。じゃあ、就職難でなければ、キャビンアテンダントになっていたかもしれないし、普通の企業に勤めていたかもしれない。何がきっかけで人生が決まるかわかりませんね。

芽が出るきっかけは素の自分がウケたこと


金丸:ご両親は中村さんが安定企業に就職されることを望まれていたようですが、芸能界に入ることに対してはどういう反応でしたか?

中村:両親からはめちゃくちゃ反対されました。

金丸:中村さんはどうされたんですか?

中村:大学の卒業式の日に両親に手紙を書きました。「3年間だけ待ってほしい」と。それでダメだったら普通の職業に就くつもりでした。

金丸:結果、芸能界を選ばれてどうでしたか?

中村:最初は、自分が考えていた以上に希望が見えてこなかったですね。全然仕事がないんですよ。あまりに仕事がないので、朝、仕事があるふうに家を出て、カフェで暇つぶしをしたこともありました。

金丸:まるでリストラされたことを家族に打ち明けられないお父さんみたいな(笑)。

中村:考えが甘かったんですよね。「こういう俳優さんになりたい」みたいな強い思いがあるわけでもなく、就職が難しいのであればといった少し軽い気持ちで入ってしまったので。親からのプレッシャーも日に日に強くなっていって、「明日から普通に働きなさい」と言われたこともありました。

金丸:親御さんも心配でしたでしょうね。

中村:その頃も実家にいたんですが、実家にいるということは、ある意味生活は守られているわけですよね。だからこの環境のままじゃいけないと思って、ひとり暮らしをしようと決意しました。

金丸:仕事って、最初のうちはどんなものだったんですか。

中村:事務所がオーディションを持ってきてくれて、それで合格すれば出演。バラエティ番組に出演するときは、お酒を3、4杯飲んだくらいのテンションで前のめりに行かないと、編集で全部カットです。

金丸:やっぱり厳しい世界ですね。

中村:何もしなければ太刀打ちできないので、ちゃんと研究もしました。家に帰ったら、とにかくバラエティ番組をたくさん見ました。そして収録に行って、勉強して、を繰り返していました。そんな生活だったので、全然時間がなくて、友達とごはんを食べながら寝ちゃったこともありました。がむしゃらだったせいか20代半ばの記憶があんまりないんです。

金丸:親御さんに心配をかけたくないというのもあったでしょうし、必死だったんですね。そこからブレイクに至ったのは何がきっかけだったんですか。

中村:長寿番組がいくつか終わるタイミングがあったんです。それがターニングポイントだったのかもしれません。

金丸:番組と一緒に出演者も変わるタイミングで入り込めたということですか?

中村:そんな感じです。それに長い髪をかきあげて、大胆なことや思っていることをそのまま言っちゃうような、私みたいなキャラがいなかったんです。

金丸:バラエティ向けにわざとキャラを作りあげたのではなく、中村さんの素がウケたんですね。

中村:やっぱり仕事ですから、スイッチを入れてテンションを上げますけど、嘘を言ったり思ってもいないことを言ったりしているわけじゃないんです。そこから、ありがたいことにいろんなところから徐々に声をかけていただけるようになりました。

金丸:今では、活躍の場をドラマや映画にも広げられていますが、ご両親は中村さんのお仕事をどう見ているんですか?

中村:喜んでくれています。「あとは朝ドラと大河に出てくれたら、思い残すことはない!」と発破をかけられます。

金丸:現金ですね(笑)。でもちゃんと理解してもらえてよかったですね。

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