SPECIAL TALK Vol.90

~トレーニングの常識をアップデートさせ、“美尻”を切り口に人びとを健康にしたい~

女性らしい体型を作るために、適したトレーニングを模索する

金丸:では、女性の意識を変えたいという思いは、仕事を始めた当初からあったんですね。

岡部:はい。当初は業務委託のトレーナーとして働き始めたのですが、横浜の実家から通うのも大変で。「自分ひとりでやったほうがいいんじゃないかな」と思って、6ヶ月くらいで辞めました。といっても、大した開業資金があるわけでもないので、マンションの1室をトレーニングルームに、もう1室をプライベートの部屋として使える物件を借りて、独立しました。23歳のときでした。

金丸:岡部さんは思い切りがいいですね。当時はそんな形態のジムって、ほとんどなかったのでは?

岡部:プライベートジムのはしりだと思います。初期費用が抑えられるので、開業のハードルは低かったですよ。

金丸:小さな部屋で始めるのは、ベンチャーの王道です。アップルがガレージから始まったように、GAFAのような巨大企業ももともとは、小さい場所から少人数でスタートしました。私自身も起業したときは、私ともうひとりのふたりでしたから。ところでご両親は、岡部さんが独立することに反対されなかったのですか?

岡部:しなかったですね。当時はジムといえば「レオタードを着たエアロビの先生がいる」というイメージが一般的だったので、そもそもピンと来ていなかったんじゃないかなと思います(笑)。

金丸:ジムははじめから順調でしたか?

岡部:いえいえ、さすがにそんなことはありません。だからしんどかったですよ。インスタグラムのようなSNSもそこまで広まっていなかったし、情報発信のために、とにかく毎日ブログを書いていました。

金丸:その頃から「美尻」を打ち出していたのですか?

岡部:いいえ。お尻との出合いはもう少し先のことで、最初のうちは「減量したい」という女性に寄り添う感じでした。痩せたからといって、女性らしい体になれるかというと、それは全然別の話なので。

金丸:無駄な肉を落としたとしても、骨格は変えられないですからね。

岡部:まさに。減量するだけじゃなくて、しかるべき箇所に筋肉をつけてボリュームを出さないといけないんです。簡単に言えば、ウエストを絞ってお尻に筋肉をつけなきゃいけない。

金丸:とはいえ、狙った部分に筋肉をつけるって、なかなか大変ですよね。

岡部:そうなんです。「お尻を鍛えるためにスクワットをしています」という方はたくさんいるんですが、スクワットはお尻だけじゃなくて、モモにも効くので……。実は下半身のトレーニングと、大臀筋のトレーニングの違いが、うやむやにされてることが多いんです。スクワットでもランジでも、身体の下げ方ひとつで、どこに効かせるかが変わってくるんです。私も「お尻に筋肉をつけなきゃ」と気づいてから、「とはいえ、どうすればいいんだろう?」と必死に探し始めました。いろいろと文献を読みあさっていくなかで行き当たったのが、アメリカの研究者の「ヒップスラスト」というエクササイズです。

金丸:それが最初の出合いですね。

岡部:でも見つけたあとが、また大変で。

金丸:というと?

岡部:その理論が教科書や文献に載るほどは知られていなかったので、How toのかたちになっていなくて。理論通りに実践できれば、バイオメカニクス的に大臀筋に効くのは間違いない。でも、ちょっとでも体の動きが変わると、お尻じゃなくて脚に効いてしまう。お客様に提供できるレベルにするために、人体実験のつもりで自分の体で毎日試しましたが、なかなかうまくいきませんでした。

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