森脇慶子の「旬カレンダー」 Vol.3

カスミチョウ スエトミ

霞町 すゑとみ

立ち上る香気は
まさに春の芽吹き

左.去年の夏に改装した店内は、白木の香りも清々しいより快適な空間に。合馬の筍、焼きすっぽんコースなど美食家垂涎の料理が楽しみ

一旬で竹にまで成長してしまうことからこの名がある“筍”。所いわ謂ゆる竹の芽にあたる部分で、我国では、古事記にもその名が記されるほど古来より親しまれていた。

とはいえ、古いにしえびと人が食したのは、真竹や淡竹の類。現在、私たちが春の味覚として心待ちにする孟宗竹は、18世紀になってから中国より渡来したものだ。他の筍に比べ姿形は太く、その白く柔らかな身に、独特の香気と甘みを持つそれは、料理の主役を張れる数少ない野菜でもある。

京都産が有名だが、生産量では福岡が日本一。中でも北九州市合おう馬まで採れる筍は、国内有数の品質の高さで、知る人ぞ知る存在だ。霞町『すゑとみ』のご主人・末富康雄氏も、合馬の筍に魅了された料理人のひとりだ。

「身が詰まり凝縮した旨さ」と末冨氏。その味を堪能するなら、皮ごと丸焼きにした炭火焼がとどめを刺す。掘りたてがその日のうちに届く筍を、丸ごと炭に埋めじっくり約40分。これをサックリ半分にカットした瞬間、立ち上る香気。とうもろこしにも似た甘い芳香の中、瑞々しさもひとしおだ。たおやかさの潜む芽吹きの力強さは、春の大地を思わせる。

●もりわきけいこ
美味の食べ歩きに日々邁進し、綿密な取材と豊富な経験に基づく記事で定評のあるフードライター。真の旬を伝えるべく、その時期とっておきの美味にありつける名店を紹介


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