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  • 高嶺の花 Vol.2

    CAをデートに誘うならステイ中が狙い目!?28歳平凡男が、美女を落とした秘策とは

    足りないもの


    「朝陽って、愛佳さんと付き合ってるの?」

    僕は、できるだけ平静を装って尋ねた。

    「愛佳は、大学時代の学園祭企画委員会の仲間なんだ。ほら、うちの大学、学園祭仕切れたら下手な会社のインターンより価値があるってくらい大規模で本格的だろ?

    俺はシステム系の裏方やっててさ、彼女は広報担当で。そこで1年近くタッグ組んでた、まあいわば戦友だな」

    「戦友…」

    僕は気が抜けて、アホみたいにその言葉を繰り返した。すると朝陽が急に茶化すような目で僕を見る。

    「もしかして…兄貴、愛佳のこと気になってるの?」

    図星を突かれて曖昧に返事をする僕に、朝陽は真剣な顔で話し始めた。

    「愛佳は、あのとおりキレイで感じもいいし、当時から『高嶺の花』でみんなの憧れの的だったよ。はっきり言わせてもらうと、そんな彼女に釣り合おうと思ったら、今の兄貴には、もうちょっと努力が必要なんじゃない?」

    ぐうの音も出ない。僕はワイングラスをテーブルにそっと置いた。

    こんなところまで白々しく偵察に来て、何やってんだ、という気になってくる。そして朝陽が口にしたあの言葉。

    「仕事もプライベートも停滞する時期って誰にでもあるけど、結局足を止めたら負けなんだよな。

    俺は、休みの日に勉強してるし、営業職として相手に好印象を与えられるようにマウスピース矯正だって始めたよ。ちょっとでも、前に進むために、兄貴も何か始めてみたら?」


    「よしっ、リボーン計画、最初の1歩はここだ」

    3日後、僕は『Oh my teeth』の表参道ストアの前に立っていた。

    あのあと、朝陽は厳しい言葉から一転、僕が恋も仕事も奮起するためのさまざまなアドバイスをしてくれた。

    そのなかでも、すぐに始めた方がいいと勧められたのが、オンライン矯正『Oh my teeth』だった。

    なんと、朝陽も愛佳先生から勧められたのだという。

    確かに、愛佳先生は研修中も歯に気を使っている人は好印象だと力説していた。ビジネスシーンでもプライベートでも魅力的な男性は歯が綺麗だと。

    朝陽から前にも話を聞いていたが、そのときはLINEで『Oh my teeth』を友だちに追加しただけにとどまっていた。

    歯で印象が格段に良くなるのならば、矯正だってしてみるに越したことはない。これはひょっとすると、今まであまり気にしていなかった分、ものすごく効果的な作戦かもしれない。

    そこで僕は一念発起し、仕事の気合も入れなおしながら、以前から少し気になっていた歯並びを『Oh my teeth』の表参道ストアで診てもらうことにした。


    歯医者とは思えないオシャレで明るいストアの雰囲気に、緊張が和らぐ。

    早速、最新の3Dスキャナーで歯型を取った。

    スキャンした歯型は、リアルタイムで3D化され目の前のモニターですぐにチェックでき、ドクターが歯並びや、口の中の状態について丁寧に解説してくれる。

    現在の歯並びから未来の歯並びに向かって歯を動かすシミュレーションを行い、そこから歯を動かすためのマウスピースを3Dプリンタを使って作成する仕組みだそう。

    こうして作成されたマウスピースが、自宅に送られてくる。

    最短2ヶ月で治療は完了し、料金は一律だそう。矯正開始後は定期的に通院する必要はなく(*1)、専属医療チームへの質問や相談もLINEで完結するので、これから出張も増えて忙しくなる予定の僕には、ピッタリだ。

    さっそくマウスピース矯正をスタートすることを決意。新しい扉が開いたような気がする。



    翌日の研修後、僕は思い切って愛佳先生に話しかけてみることにした。研修は後半戦に差し掛かろうとしている。このままあっさり試合終了になることだけは避けたい。

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