最終レッスンに間に合えば Vol.1

最終レッスンに間に合えば:恋愛依存気味の25歳女が、自分磨きのために週7で行う“ルーチン”とは


「杏奈。飲み物ビールでいい?」

光輝と会うのは、1週間ぶり。今日は彼の家でお家デートだった。週7ジムのルールが守れるように調整していたら間隔があいてしまい、それもあってことさらドキドキする。

「杏奈、こっちおいでよ」

甘い声に吸い寄せられ、ソファでくつろぐ彼にもたれかかる。

「今週の土曜日、何したい?」

光輝は大抵、私の予定が空いている前提で物事を進めてくる。だからいつ誘われてもいいように、光輝が誘ってきそうな日は大抵空けていた。

でも私が光輝を追っていると思われるのは嫌なので、あくまで「誘われたから会う」というスタンスは貫いていた。

「映画観たいかも。あ、でもその日夜予定があって、21時頃まででも大丈夫?」

「いいけど、他の男に会うの?デート、その時間までっていうの多いよね」

「え?」

突然の質問に、思わず変な声が出てしまう。

「他の男?」

焦る気持ちがバレないように、彼の言葉をただ繰り返した。

「その時間から入る予定って、男と会うんじゃないの?」

― 私の気持ちを確かめるための質問?私が本命だから?でも正式に告白される前に、自分だけの女だと思われれば、その程度だって思われるかもしれない。

「まあ、ちょっとね」

今はレベルの高い女だと思わせることが大事だと判断した私は、余裕のある表情を作って見せた。

「そっか」

嫉妬なのか悲しいのか無関心なのか、光輝の感情が全く読めなかった。

― けど、無関心だったらこんな質問しないよね?

期待に気持ちが傾く。

私がこんな駆け引きをするようになったのは、大学時代に経験した辛い恋がキッカケだ。

『付き合う人は自分の鏡』

自分を全く大切にしてくれない男と付き合って、ボロボロになった私に、目を覚ませと親友がかけてくれた言葉。

それ以降、アルバイト代はジムや美容につぎこんだ。理想の男性を手に入れるために。

週7のボディメイクレッスンで自分という素材を磨きあげれば、きっとそれに見合う男性の目に留まるはず。

光輝みたいな人と付き合えたら、こんな男性に見合う女だと私の価値も証明される。

― 私の価値は、光輝と付き合えるかで決まる。

「杏奈、聞いてる?」

光輝に呼ばれて、ハッと我に返る。

「ごめん、聞いてるよ。どうしたの?」

「そろそろお風呂に行こうって。今日も一緒に入ろうよ」

光輝の指が、ジムの甲斐あってほっそりとくびれたウエストに触れる。

「…ねえ、私と付き合う?」

口が勝手に動いていた。

言い終えた後で、自分の心臓があり得ないくらい速く動いていることに気づく。観ていたYoutubeの自動再生もタイミング悪く切れ、沈黙で包まれる。

「…杏奈」


▶他にも:「筑駒 VS 塾高」エリート男に二股をかけた女。プロポーズ前夜の衝撃的結末とは

▶Next:10月11日 月曜更新予定
「今度こそは、理想男性の彼女に」男で自分の価値を決める女の告白に、彼の衝撃の返事とは?

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この記事へのコメント

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No Name
ジム行ってるっていえばいいじゃん!!
2021/10/04 05:2999+返信5件
No Name
何となく、うまくいかなそうだ。
2021/10/04 05:2899+返信2件
No Name
好きな人と会う時くらいジム休めばいいのに。
付き合う前に身体の関係持って、他にも男がいる軽い女と思われてるから、彼にとってはただの遊び。本命彼女になるのはかなり難しそう。
2021/10/04 05:3794
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