2021.09.21
SPECIAL TALK Vol.84高岡:「いつか日本高圧電気に入れ」とは言われていました。そして、自分と同じ分野を勉強しても意味がない、と考えていたようで。
金丸:お父様に足りない部分や、今後会社として伸ばしたい部分を勉強してほしかった?
高岡:おっしゃるとおりです。父は英語がしゃべれなかったので、「留学して英語を身につけろ」とも言っていましたね。
金丸:大学はどちらに進まれたのですか?
高岡:名古屋大学です。
金丸:大学もやっぱり名古屋なんですね。
高岡:僕は当時の名古屋の街に田舎臭さを感じていて、京都とか東京に出たかった。でも父が「いや、名古屋大だ」と。普段は「おまえ、好きなことをやれ」と言いながらも、僕を地元に置いておきたかったんですよ。
金丸:要所要所で「ああしろ」「こうしろ」と言わずにはいられない。お父様もいろいろと葛藤があったのでしょうが。
高岡:最終的には僕が折れて名古屋大を受験しましたが、自分の選択ではないので、正直やる気を失いました。そのせいで第一志望の電気は滑ってしまいましたが、応用物理には合格して。物理も嫌いではなかったので、まあ、いいか、と。
情で落とされ、家業を継ぐことを決意
高岡:それに実家を継ぐなら、経営の勉強もしたいと思っていました。父は「経営なんか会社に入れば身につく。英語を勉強してこい」と言っていましたけど。
金丸:“他流試合”なんて言い方もありますが、跡継ぎに経験を積ませるため、他社で修業させることもありますよね。お父様はそのつもりはなかったのですか?
高岡:「自分のもとで勉強するのが一番だ」と思っていたようです。でも大学卒業後、今度こそ名古屋を飛び出そうと、慶應義塾大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)に進学しました。ビジネススクールには社会人がたくさんいて、みんな楽しそうだったので、「いいなあ。僕も東京の大手町あたりで働きたい」と思うようになって。
金丸:でも、お父様が許さないのでは?
高岡:反対されるのは目に見えていたので、内緒で就職活動をして、日本長期信用銀行のシンクタンクである長銀経営研究所に内定をいただきました。それで「東京で働く」と伝えたところ、父が急に慌てだしたんです。
金丸:それは慌てるでしょうね(笑)。
高岡:慶應に通っている間、父は仕事でしょっちゅう東京に来ていましたが、僕の下宿を訪ねたことも、「飯を食おう」と誘ったこともありませんでした。それが突然、ホテルに呼び出されて行くと、すごく悲しそうな顔をした父がいて。
金丸:これまでのお父様とは、随分印象が違いますね。
高岡:理屈でこられたら反発していたと思いますが、情で攻められるとは想定外でした。それにもうひとつ、「この間、人間ドックに行ったら、ここに影があってな」と。
金丸:え、ご病気に!?
高岡:それが真っ赤なウソ(笑)。あれは参りましたよ。
金丸:とんでもない策士ですね(笑)。
高岡:結局、東京での就職は白紙になり、日本高圧電気に入社すると同時にアメリカに留学しました。就職と並行して試験をいくつか受けていたのですが、スタンフォード大学に通うことに。
金丸:スタンフォードを選ばれた理由はなんですか?
高岡:非常に単純です。慶應の恩師がゴルフ好きで、「スタンフォードにはゴルフ場がある。きみが通えば俺もプレーできるから、スタンフォードにしなさい」と。
金丸:これはまた正直で面白い先生ですね(笑)。
高岡:その先生から「勉強するなら、家業とはちょっと違う分野にしたらどうだ?」というアドバイスをいただいたこともあり、スタンフォードではシステム工学を学びました。名古屋大学、慶應義塾大学、スタンフォード大学と、それぞれ違う土地で違う分野の勉強をしたことで、いろいろなものの見方ができるようになりましたね。
金丸:スタンフォードを卒業後、いよいよ本格的に日本高圧電気で働き始めたのですか?
高岡:はい。ただ父は「電力機器だけやっていると、会社がいつかダメになるかもしれない」と考えていたようで、僕は主力の電力機器ではなく、新規事業の方に配属されました。
金丸:現状にあぐらをかくのではなく、チャレンジスピリットがあった。
高岡:ですが、事業の中身が問題で。小さな電力機器とはまるで事業構造が違う、建材にチャレンジしていたんです。電力機器に使うセラミックで、燃えにくい建材を作っていて。
金丸:目のつけどころは悪くないように思えますが。
高岡:ビジネススクールに通ったおかげで、数字を見る力はあります。だから、黒字化が無理だとすぐに分かりました。
金丸:それをお父様に伝えて?
高岡:もちろん伝えました。でも、26歳で係長の僕と、社長である父とでは立場が違います。毎年何億円という赤字を出しているのに、父は撤退しようとしない。かといって、僕の一存で生産を止めることもできない。
金丸:いきなり大きな壁にぶち当たりましたね。
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