冠番組に「ブサイク」がつくアイドルなど、彼らをおいて他にいないだろう。
Kis-My-Ft2、通称“キスマイ”。ジャニーズ事務所という正統派アイドルの系譜に名を連ねながらも、グループの立ち位置を「ユニークな存在」と自己分析する。
だが、「ひとりも欠けず7人揃って、デビュー10周年を迎えられるのは奇跡」と胸を張るその姿からは、がむしゃらに駆け抜けてきた自負がのぞく。
グループの“イケメン”を担ってきた藤ヶ谷太輔さんと玉森裕太さんに、グループそして個人としてのこれまでとこれからに迫った。
―藤ヶ谷太輔side
「これ、よかったら皆さんで食べてください」
そう言って手渡されたのは、下町の老舗和菓子店の菓子折だった。
アイドルから手土産をいただく。想像もしなかった始まりに、スタッフ皆、たじろいでしまう。
だが、藤ヶ谷太輔という男にとっては、ごく自然なことのようだ。
「今日の午前中、その辺りでロケをしていたんです。ゆったりした収録だったので、立ち寄る余裕があっただけですよ。
気遣い、って意識でしたことでもないですし、毎回してるっていうわけではないので、そんなそんな(笑)」
謙遜して笑う。
自分に嘘をつかないこと。それが人として美しい姿だと思う
〝キスマイ〞のメンバーとしてデビューして10年。怒涛の日々を経て今、「ようやく自然体でいてもいいかな、と思えるようになりました」と言う。
デビュー時は24歳。まずはグループを覚えてもらうため、二枚目キャラを担った。
「デビュー後すぐに舞祭組が生まれたんですけど、その時、中居さんに言われたんです。
〝お前が二枚目で行けば行くほど、舞祭組4人の幅が広がって、それがグループの幅になっていくから〞って。そうか、と目から鱗でした」
以来、30歳まではカッコつけていこうと決めた。
「30を過ぎて、また中居さんとお話しをするタイミングがあり、〝そろそろ良く見せるのはやめようと思ってます〞と伝えたら、“もうちょっとできないか〜?”なんて言ってくださったのですが(笑)。
今はほぼ自然体でやっています」
“カッコつけるのはやめた”
34歳、アイドルとして、大人の男として、ひとつの節目を迎えた男の決意でもあるのだろう。
取材後、いただいた菓子折を開けてみた。中に詰まっていたのは、愛らしい豆大福。
まっすぐでシンプルで、静かに余韻を残す味わいに、「自然体でいる」と語った彼の姿がリンクした。
自身の心が動かすこと。彼が周りを幸せにできる理由が分かった気がした。