2021.07.20
アイ・ニード・モア〜外資系オンナの欲望〜 Vol.1隣にいるべきなのは“私に相応しい男”
<雄介:やっぱり、離婚は考え直してもらえないかな?>
スマホに浮かび上がる、夫からの未練がましいメッセージ。内容は先週末に佳奈子から切り出した離婚についてだ。
<佳奈子:弁護士を通してください>
佳奈子は冷めた感情のまま機械的に返信を打つ。そして、心の中で悪態をついた。
― たった900万しか稼がない男のくせに、図々しい…。
雄介と結婚するときにわずかだった給与の差は、年月を重ねるほどにみるみると大きくなっていった。
夫として、娘の父親として、人として、雄介にはまったく非がないことは分かっている。
しかし、自分はメディアから取材を受けるようになるまで上り詰めた女。「給与が自分よりも格段に低い夫」という事実は、雄介に男性的魅力な魅力を感じなくなるのに十分すぎる理由だったのだ。
こんな物足りない男じゃなくて、私にはもっと他に相応しい相手がいるはず。
そう確信した今、慰謝料も養育費もいらないからとにかく早く別れたい。
取り付く島もない佳奈子の態度に雄介がついに離婚を承諾したのは、それから半年後のことだった。
◆
「じゃあ、お母さん。今夜も凛の面倒よろしくね。立場上、仕事の会食とか色々あって。私1人だし大変なの」
晴れて独身となった佳奈子は、軽やかな足取りで玄関に行き、ジミーチュウのパンプスを履く。
何かもの言いたげな実母の視線を背中に感じたが、振り切るようにしてドアをバタンと閉め、オフィスへと向かった。
平日の夕方から娘の面倒を見てくれていた雄介はもういない。そのかわりに実母が面倒を見るのは、佳奈子にとっては当然のことだった。
― だって、私はもっといい男と再婚するために雄介と離婚したんだもん。
もちろん、本当に仕事や会食で忙しい夜を過ごすこともあった。だが実のところ、ここ最近佳奈子の帰りが夜遅くなる理由は、再婚に向けた出会いの場に積極的に参加するためでもあったのだ。
しかし、それからの日々は、佳奈子にとって大きな誤算ともいえるものとなった。
― 雄介よりもハイスペックな相手なんて、すぐに見つかるわ。
そう思っていたのに、再婚相手探しは全くといっていいほど進まなかったのだ。
「へぇ〜。佳奈子さん、外資証券のディレクターなんだ!年収もすごいでしょ?自立していてカッコいいねぇ…」
― コイツ、発言からして頭悪そう…。
「佳奈子ちゃん。日曜日にクルージングするんだけど、一緒にどう?」
― だから、子どもいるから無理だって…。話聞いてなかったのかな。
どんな男たちも、佳奈子の求めるレベルには届かない。自分を理解してくれて、一緒にいて楽しいと思える男性は、たったの1人もいなかった。
◆
― 思うような男っていないものね…。ほんと、世の中のレベルの低さったら。
激務と婚活の日々が始まり、一年半ほどの月日が経った頃。不本意なデートから帰宅した佳奈子に、母親が言った。
「佳奈子、本当に毎日仕事なの?少しは早く帰れない?」
思わずイラッとした佳奈子はどうにか憤りを飲み込むと、感情を抑えた声で答えた。
「お母さんに迷惑をかけているのはわかってる。でも、私だって忙しいのよ」
しかし、母親から返ってきたのは辛らつな反論だった。
「もちろん、忙しいあなたのことも応援してるわ。でもね、私はなにより凜ちゃんのことが心配。離婚してパパがいなくなって、その上ママは忙しくて全然帰ってこない。寂しいと思うわ。少しは時間作ってあげたら」
母親はそう言うと、諦めたようにため息をついた。
「…まぁ、ちょっと考えてみなさい。それからこれ、届いてたわよ」
そう言い残して帰っていった母親の背中を見ながら、佳奈子もため息をつく。確かに正論。でも、全く心に響かない。
― もっと高みを目指して、何が悪いのよ。外資系企業の第一線で働く女には、向上心が必要なの。お母さんには分からなくても、凛は分かってくれるに決まってるじゃない…。
うんざりした気持ちで母親の言葉を頭の中でゴミ箱に入れると、ウォーターサーバーから冷たい水を注ぎ、一気に飲み干した。
「ふぅ…」
一息ついた佳奈子の目にやっと、母親が置いていったものが目に入る。
オフホワイトのシンプルな封筒。
差出人欄には、去年別れた夫「金井 雄介」の名が記載されていた。
「はぁ…、しつこい男。今さらなんなのよ」
水滴のついたコップをテーブルに置くと、乱暴に手紙の封を開ける。
そこに書かれていた内容は、佳奈子にとって信じがたいものだった。
向上心と独りよがりを履き違えたらだめですね。
「いいことはおかげさま、わるいことは身から出たさび」、自分も気をつけよう。
【アイ・ニード・モア〜外資系オンナの欲望〜】の記事一覧
2021.10.01
Vol.12
会社の不祥事で、世間の非難の的に…。マスコミに謝罪会見した役員女性が放った痛烈な一言
2021.09.30
Vol.11
負けたくない。全てが欲しい女たちは…「アイ・ニード・モア〜外資系オンナの欲望〜」全話総集編
2021.09.24
Vol.10
「奨学金借りてたなんて、かわいそう」元苦学生の同期をバカにしていたら、上司に呼び出され…
2021.09.17
Vol.9
「なんでできないの!」会議室に響くヒステリックな声。”使えない部下”ばかりを持った女の誤算とは
2021.09.10
Vol.8
「今夜は夫を無視しよう」結婚生活の理想と現実。イライラする妻に対して、温和な夫は…
2021.08.31
Vol.7
「時短で楽してるくせに」ワーママを目の敵にするキャリア重視の女が、不本意な業務を割り振られ…
2021.08.24
Vol.6
「うわ、ダサい格好」なんて見下していた女友達に…。週末のランチで味わった敗北感
2021.08.17
Vol.5
同期のエースに口説かれて、調子に乗っていたら…。外資系美人秘書が転落したショックすぎる理由
2021.08.10
Vol.4
4度の転職でキャリアが台無しに…。有能なバリキャリ帰国子女が知らずのうちにハメられた罠
2021.08.03
Vol.3
「男の人と付き合うと、いつも…」才色兼備なハイスペ女子が、絶対に半年以内で別れてしまう理由とは
おすすめ記事
2017.08.02
にゃんにゃんOL物語
にゃんにゃんOL物語:“慶應卒の商社マンと結婚したい”と願う、腰掛けOL(26)は幸せなのか?
2021.02.11
忘れられない“あの日”
「好きなんて、言わなきゃよかった…」24歳女が、バレンタインに犯した致命的ミス
2023.05.12
甘いひとくち〜凛子のスイーツ探訪記〜
彼の誕生日祝いに、ディナーを予約したのに。当日夕方に届いたのは一通のそっけないLINEで…
2020.03.08
14日間の恋人
14日間の恋人:「名前も知らない男と…?」普段はマジメすぎる女が、旅先で初めての経験をした日
- PR
2024.03.27
海外セレブの間で「テキーラで乾杯」が流行中!お祝いの席にぴったりな、ラグジュアリーテキーラとは
- PR
2024.03.26
GWの予定はもう決めた?北海道&沖縄で絶大に支持されるリゾートホテル4選
2022.10.18
東京Monster
「色気がない」と言われ続けた女子校育ちの女。異性の目を引くために身につけた異様な手段
2021.10.08
高偏差値なオンナたち
高偏差値なオンナたち:自分よりも低学歴な夫が海外駐在に。復職断念を迫られた妻は、口が滑って…
2019.03.29
東京コンプレックス
東京コンプレックス:結婚できない女が、煮え切らぬ彼氏のプロポーズを引き出した意外な方法とは
2021.02.06
乗れるものなら、玉の輿
乗れるものなら、玉の輿:溝の口・家賃8万の部屋に住む“ひとり焼肉女子”。彼女が結婚相手に求める唯一の条件
東京カレンダーショッピング
『秋田かまくらミート』:秋田を代表するブランド牛「秋田由利牛」!サシの美しい上質なしゃぶしゃぶ用サーロイン
『肉のABCフーズ』:黒トリュフ塩付!牛タン&A5ランク黒毛和牛を使った極上ハンバーグ
『パンツェロッティ』:具材ごろごろボリューミー!フレッシュな野菜と肉感満載のフライドピッツァ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"
『レザンファンギャテ』:しっとりと濃厚で、コクのあるニューヨークスタイルのチーズケーキ
『ル・ボヌール 芦屋』:しっとりサクサク!フリーズドライ苺にホワイトチョコをたっぷりと浸透させた新感覚スイーツ
ロングヒット記事
2024.03.18
「そういうとこ」で振られる男
「元カノと復縁できるかも」と喜ぶ34歳男。タイ料理店でデート中、彼女の表情が曇り…
2024.03.19
Editor's Choice~fashion~
感度の高いイマドキ女子から大人気!モネ“睡蓮の池に架かる橋”がフェイラーのキュートなハンカチに
- PR
2024.03.21
Editor's Choice~beauty & wellness~ 特別編
仕事もプライベートも充実している人ほど、〇〇投資している!?当たり前すぎて意外な生活習慣とは
2024.03.22
大人の週末ToDoリスト
長澤まさみ出演の映画や、バンクシーの展示…今週末いくべきイベント3選
2024.03.24
Editor's Choice~hotel~
シャンパンのフリーフローをテラスで堪能!渋谷の最新ホテルで叶う華やかな女子会
この記事へのコメント