復讐 Vol.1

復讐:音信不通になって3週間。偶然街で見かけた親友の信じられない状況

食事会で涼真と出会ったのは、2か月前のこと。きっとこれを運命と呼ぶのだろう、そう思った。

イケメンの部類には入らないけれど、カラッとした笑顔に映える真っ白な歯、何かを秘めたような力強い眼差しに、一瞬にして私は心奪われたのだ。

そして、外資系投資銀行でのキャリアを経て、実家の老舗料亭の経営者となったという、彼の魅力が培われたであろうルーツを知り、合点がいった。

桁外れのハードワークを耐え抜き、32歳という若さで重すぎる責任と肩書を背負い、それでも戦い続けるその生命力は、圧倒的なオーラとなって彼から放たれているような気がした。

決して自慢したり驕ったりせず、多くを語らない。それなのに、色気と自信がにじみ出ている。

そんな魅力的な男が向こうからアタックしてきてくれたことは、私にとって、ほとんど奇跡だと思った。

「真由子ちゃん、今日はデートしてくれてありがとう」

初めて2人で食事したとき、涼真はそう言って熱い眼差しで私を見つめた。

どうしようもなく幸せな気持ちで満たされる。体の芯から体温が上昇していく。

圧倒的に一流の男からアプローチをされる。それだけで、自分も彼と同じ土俵に立ったような、選ばれた人間のような気がしてしまう。今までの人生で感じたことのない優越。

―私、絶対にこの恋を逃さない。

本能的に、そして打算的に、全身全霊でこの恋をモノにすると、私は意気込んだ。

それなのに…。


悲劇はすぐに起きてしまった。

「真由子ちゃん、良かったら今から一緒に飲まない?」

多忙な涼真とは、休日デートを3回してから、2週間ほど連絡が取れずにいた。焦れるほど彼からの連絡を待ち続けていた私は、突然の電話に舞い上がり、冷静な判断を欠いてしまった。

そして、ちょうど愛菜と2人で飲んでいたところに、涼真が合流することになったのだ。

当然、愛菜にも涼真の話はリアルタイムで話していた。もしあの時、「今からデートに行く」といって謝れば、愛菜も快く送り出してくれたと思う。

だけど…。

私はちょっとだけ、欲を出した。

愛菜に自慢したかった。

私、こんな男にアプローチされているの、すごくない?って。ほんの少しだけ、彼を見せびらかしたかった。

でも、これが私の唯一にして最大の過ちとなってしまったのだ。

その日から、涼真からの連絡は完全に途絶えた。そして、不思議なことに、同時に愛菜からの連絡もほとんどなくなった。

この記事へのコメント

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No Name
好きな人横取りしたんか…
友達には紹介するもんじゃないな
2020/12/27 05:1299+返信13件
No Name
おもしろそうなやつキタ━(・∀・)━!!!
最終回の駆け足はナシでお願いしたい
2020/12/27 05:1799+返信6件
No Name
老舗料亭って、クリスマスイブの夜は暇なの?
2020/12/27 05:3870返信2件
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