SPECIAL TALK Vol.68

~故郷に職人のエデンを作りたい。世界一の庭師として次に挑むものがある~

海外の主流に合わせず、日本の強みを生かし勝ち続ける

金丸:決死の覚悟で世界に挑んだ結果は、どうでしたか?

石原:右も左もわからない状態でしたが、その年の最高賞に該当するシルバーギルトメダルをいただくことができました。

金丸:初出場でいきなり最高賞ですか?

石原:ありがたいことに。庭の順位は、5段階の点数制で評価されます。最上位はゴールドとシルバーギルトの2種類のメダルがあって、その年はゴールドに該当する庭がありませんでした。

金丸:石原さんの作品は、どんな部分が評価されたのでしょうか?

石原:イギリス式の庭は花をいっぱい植えます。だから僕は逆に、花を1本も使いませんでした。しかも、かつて長崎の出島からヨーロッパに渡った紅葉やツツジなどの植物で、庭のベースを作りました。

金丸:長崎出身の石原さんがそれをやるというのは、またストーリーがありますね。

石原:もうひとつ「循環」というテーマも込めました。雨が降り、森林に溜まった水が川から海へと流れて蒸発し、また雨として降り注ぐ。生まれ育った長崎の原風景を庭で表現したいと思い、清らかな水辺に雑草を茂らせ、さらに石畳や松の盆栽も組み込んだ作品に仕上げました。

金丸:そんな独創的な庭、チェルシーの人たちも見たことがなかったのでは?

石原:みなさん、「えっ!?」という感じでご覧になっていましたね。ただ、ゴールドメダルじゃなかったので、審査員に「なぜですか?」と聞いたんです。すると「ラブリーさがない」という答えでした。

金丸:それはどう解釈すればいいんでしょう。

石原:僕は「花が足りない」ということだなと考えました。でも、僕の庭にバラは似合わない。自分の記憶をたどると、畑の隅にいつもアヤメが咲いていたのを思い出しました。小さな原種のアヤメです。次はこれをチェルシーで咲かせたいと。

金丸:では、翌年にアヤメで挑戦を?

石原:いいえ。連続出場する資金はなかったので、翌年の2005年はとにかくお金を貯めてスポンサーを集め、2006年にアヤメを咲かせるべく再出場しました。アヤメは6月に咲く花ですが、審査が行われるのは5月23日の朝の7時半。その時間にちょうど咲いている状態を作らなければいけません。

金丸:多少の調整はできるでしょうけど、どうやって時間ぴったりに咲かせたのですか?

石原:温室に入れただけでは分単位の調整はできないので、暖房をガンガンに効かせた部屋から出し入れして微調整しました。大変でしたけど、その結果、ゴールドメダルをいただきました。しかも、そのなかでも「ベストガーデン」という最高栄誉の賞です。

金丸:絶対に世界一になると決めて、本当に世界一になってしまうとは。しかも2度目の挑戦で。

石原:でも、日本に帰って「チェルシーでゴールドメダルを受賞した」と言っても、「え、なに?」という反応で。「チェルシーって飴の話?」とか、「世界一? まぐれでしょ」という人も。「だってもともと石原くんって、庭とか知らんでしょ」と。

金丸:せっかくゴールドメダルを取ったのに、そんな反応とは(笑)。

石原:だから僕は、出場し続けてやろうと決めました。出続けて、エリザベス女王から「あなたが世界一よ」というお言葉をいただければ、誰も文句を言えないはずだと。

金丸:そこでめげずに続けようと切り替えられるのが、すごいですね。

石原:われながら無謀なチャレンジだと思いましたよ(笑)。でも実際に14年出場し続けて、11回ゴールドメダルを取りましたから。

金丸:そこまでやれば、石原さんが世界一だということに異論は出てこないでしょう。

石原:やっと世界中の方から依頼してもらえるようになりました。

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