14日間の恋人 Vol.9

「このメッセージ、何かがおかしい…」メールを受け取った女が、男の嘘を一瞬で見破ったワケ

ひとり旅をするとき、こんな妄想をしたことはないだろうか。

―列車で、飛行機で、もし隣の席にイケメンor美女が座ったら…?

そして、妄想は稀に現実になる。

いくつになっても忘れないでほしい。運命の相手とは、思わぬところで出会ってしまうものなのだと。

傷心旅行に発った及川静香は、素性の知らない男と恋に落ちるが…。出会いから、別れまで、たった14日間の恋の物語。

◆これまでのあらすじ

静香は元カレに別れを告げられ、二人で行く予定だったハワイへ一人旅に出る

出会ってすぐに男女の仲になった勇作に運命を感じるが、そんな折、元カレが見知らぬ女性とハワイで挙式すると知る

その夜、バーで元カレ・健次と出くわしてしまい…。


Day9,2019年6月16日。


0時11分、アラ・ワイ・ボートハーバー近くのバー。

健次を見つけた瞬間、静香は足を止め、固まった。

「どうしたの?」

隣にいた勇作が困惑して聞いてくるが、静香は返す言葉を持ち合わせていない。

後ずさりするように元いた席に戻ったが、動揺は隠せなかった。目が泳いでいるのが自分でもわかる。

勇作は、静香の視線の先にいる男の存在に気づいたようで、薄暗い店内で目を凝らしている。

「もしかして、あの人が…?」

返事が出来なかった。ただ勇作は、その反応ですべてを察してくれる。

「ウソだろ…。なんで、ここに…」

目を背けてはいけない。静香はあらためて健次を見た。

健次はこちらに気づかず、ひとりで酒を煽っている。テーブルには飲みかけのグラスが数杯置いてあるから、おそらく連れがいるのだろう。奈央という結婚相手だろうか。

ほどなくして3人の男性が楽しそうに会話しながら、健次の席に戻ってきた。いずれも見覚えのある顔。健次の親友たちだ。

健次がいたテーブル席は、総勢4人となった男たちで埋め尽くされた。きっとこれで全員だ。他に連れはいない。

つまり、奈央はいない。

「あ、そっか…」

唐突に静香の口から、声が漏れた。勇作は小声で聞き返す。

「なに?」

「あれ、バチェラーパーティだ」

独身最後の夜を、健次は男友達とだけで過ごしているのだ。静香はそう確信した。

当時、付き合ってすぐに紹介され、事あるごとに一緒に飲んでいた健次の親友たち。彼らは、彼が二股していたことを知っていたのだろうか。知っていながら、最後の2年は何食わぬ顔で静香と会っていたのだろうか。

親友たちは健次の二股を咎めただろうか。いや、咎めてはないだろう。でなければハワイの挙式までついてこないし、楽しそうなバチェラーパーティを開催したりはしない。

―全員クズだ。

許せない。静香はどうしても許せなかった。そして、すべての原因を作った健次に対し、どうしようもなく腹が立つ。

「私、ちょっと行ってくる」

静香はそう言って、席を立った。

【14日間の恋人】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo