妻のベール Vol.14

「妻のありがたみに、やっと気がついた」。夫がひとりの生活で、実感したコトとは

IT社長として成功した柳川 貴也(やながわ たかや)の妻・美香。

共に貧しい時代を乗り越えたこともあり、今でも貴也の一番の理解者である妻。

彼女の支えがあったから成功出来たと言っても、過言ではない。

成功者の夫と、それを支えた妻。絵に描いたような夫婦に隠されていた、妻の秘密とは?

◆これまでのあらすじ

美香に入れ知恵をしていたのは、後輩の財前だった。その理由は、ひとえに貴也への嫉妬から。貴也は、どんな決断を下すのか・・・?


2019年 夏


−朝か…。

まだうす暗い室内で、貴也は目を覚ました。カーテンの隙間から、一条の光が差し込んでいる。

妻・美香が出ていった後の部屋は、埃っぽいように感じる。

それだけ彼女が、普段から家の中を整頓してくれていたということなのだろう。一人暮らしになってから、美香のありがたさが分かるようになった。

昨晩は、呑んだくれてそのままソファで寝てしまった。ベッドで寝なかったせいか、全身の節々が痛む。

再び眠ろうと目を瞑ったが、眠気が訪れることはなく、ただただ横たわって宙を見つめていた。

美香が出ていってからというもの、無気力のような状態が続いている。仕事にもほとんど身が入らなかった。

処理すべき書類はいくらでもあるし、解決すべき問題だって山積みだ。家庭のゴタゴタを仕事に持ち込むなんて、経営者としてどうかと思うが、体が動かないのだ。

「美香…」

その声は喉の奥で小さく、泡のように弾けて消えた。

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