急募:僕の嫁 Vol.2

「この男、不思議ちゃん…?」敏腕結婚カウンセラーが見抜いた、男の深層心理

事実を歪曲した男


「お待たせいたしました。お部屋にご案内します」

受付を済ませた進太郎がソファで待っていると、スーツ姿の女性がやって来た。

「こちらへ」と促された進太郎は、パキパキと歩く彼女の後に付いて行く。

年齢は30代後半だろうか。目鼻立ちのはっきりした綺麗な女性だった。

−こんな綺麗な人もいるもんだなあ。

結婚相談所のカウンセラーというと、何となく“お節介な年配女性”をイメージしていたから、進太郎にとっては嬉しい誤算だった。

個室に入った進太郎は、席に座って彼女と向き合う。彼女の大きな瞳にじっと見つめられると、何だか急に恥ずかしくなった。


「初めまして。曽根様の担当をさせていただきます。室井と申します」

そう言って差し出された名刺には、室井美里(むろい みさと)と書いてある。

「室井さんのお名前、ほとんど左右対称の漢字で出来てるんですね」

彼女の名前に感動した進太郎は、図らずも反応してしまった。すると室井が「えっ?」と、困惑したような表情を浮かべた。

「左右対称の漢字を使った名前って縁起が良いんですよ」

「ありがとうございます。さて、今回は結婚相談所へのお申し込みということですね。まずはこちらにご記入いただけますか?」

室井は、進太郎の名前トークに興味がなかったのか、あるいは、さっさと切り上げた方が良いと思ったのか、早速本題に突入した。

結婚相談所を考えたきっかけ、理想の相手像(重視するポイント)、いつ頃までに結婚希望か…など、予想通りの質問が並んでいる。

何となく考えて来た答えを記入していく進太郎だが、とある質問で書く手が止まった。

“休日の過ごし方”

−これ、正直に書かない方が良いのかも…?

進太郎は、休日のほとんどを家で過ごす。やることは大きく2つ。料理、洗濯に掃除などの家事と、Amazon PrimeやNetflixで動画鑑賞。

家事の中でも料理は大好きで、かなりの腕前だ。イタリアン、中華、お菓子は一通り作れる。

最近は和食に力を入れていて、先日作った、海老しんじょうのあんかけは、店が出せるレベルに美味しかったし、山椒の葉を添えたタケノコの炊き込みご飯も絶品だった。

Amazon Primeとネットフリックスは、海外ドラマやバラエティなど、ソファでゴロゴロしながらずーっと見ているのだ。

−でも、これ書いたらインドアな人間って思われるよな。

何となく、休日はアクティブに過ごしていると書いた方が、女性受けする気がする。ありのままの姿を書いて、根暗だとは思われたくない。

そう考えた進太郎は、いささか事実を歪曲し、“休日の過ごし方:ジムでの運動、美術館巡り”と記入し、知的かつ運動神経も良いアピールをしてみた。

この記事へのコメント

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No Name
>"ビビビ”と、雷に打たれたような感覚が身体中を駆け巡り、そのまま恋に落ちるのだ。

これで松田聖子は失敗したやないかい。
若い人は知らんだろうけど笑。
2020/04/14 05:4799+返信6件
No Name
やっと会えたねってシャルルドゴール空港の辻仁成じゃないか!
ロマンチストというか結婚に夢見すぎ。
2020/04/14 05:5995返信2件
No Name
条件がない が1番理想が高いとも気付かずに……
2020/04/14 06:0592返信3件
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