フレネミーな2人 Vol.1

フレネミーな2人:「あの子、失敗してくれたらいいのに」看板アナの座を狙う、新人女子アナの裏の顔

「さて、今日の特集は話題のキッチン便利グッズですが…その前に、なんと、わたくし野々村葵が『新人女性アナウンサー好感度ランキング』にランクインしたとの速報が入りました」

震える手を握りしめ、混乱する頭で出されたカンペを淡々と読みあげる。MCが「え、何位だったの?」と煽る声が、遠く聞こえた。

―あ~あ。やっぱり9位なのか。イヤだ。

スタッフがめくったカンペには、何度確認しても“9位”と書かれている。

「…んん~言わなきゃだめですか?」

それでもいまは、生放送中だ。平静を装い“猫なで声でMCを見つめる”というお決まりのパターンを繰り出す。

するとMCは「え〜じゃあ言わなくてもいいよぉ」とわざとらしく返し、それに女芸人がツッコんだ。

「いや、カンペに9位だって書いてあるじゃん!…野々村アナ、男ウケばっか狙って性格悪そう。絶対に女友達いないと思います、だってよ」

悲しいでも悔しいでもない、生々しい焦りが込み上げてくる。

「うわ、同期の神田エリサアナは10位?ふたりとも、順位低いな〜!」

MCが興奮した声で叫んだ瞬間、スタジオが急にざわついた。

―え、エリサとほとんど一緒…?

葵は咄嗟に、甘えたような声でMCに泣きつく。

「何これ…どうすればいいですかぁ〜」

「分かった!神田アナと同居でもしたら?女同士でも上手くやれるって世間に見せられるし、あんまりない形だから話題にもなるよ。いいじゃん、決まり決まり」


収録後。

楽屋に戻った葵は、鏡に映る自身の姿を見つめながら、ため息をついていた。

―私、いつの間にか男ウケ重視の甘えん坊キャラになってた。新人だし、その方がやりやすかったけど…もしかしてこのキャラ、損してる?

「神田アナと同居でもしたら?」放送中にMCが何気なく放った、あの言葉がリフレインする。

こうなったらもう、ピンチをチャンスに変えるしかない。

葵は椅子からスッと立ち上がると、マノロのヒールをカツカツと鳴らしながら、アナウンス室へと走った。



「久しぶり」

楽屋を飛び出した葵は、迷うことなくエリサのデスクに向かった。

「久しぶりって、おかしいでしょ」

「オンエア以外で話すのって、久しぶりじゃない?」

口元はかろうじてニコリと微笑んでいるが、エリサを見つめる葵の眼差しは冷たい。

「何?」

エリサも眉ひとつ動かさず、葵を見つめる。

「話題になると思うの。エリサのためにもなるし」

「…え?なんのこと?」

「いいから。さっきの『ランチワイドショー』の私のコーナー、確認して」


▶Next:4月15日 水曜更新予定
勢いで同居?そんな2人を待ち受けていたトラブルとは?!

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この記事へのコメント

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No Name
嫌な女の話かな話と思いつつ読み始めたけど、同居するの??なんか面白い方向に行きそうだね!^ ^
2020/04/08 05:1566返信3件
No Name
昨日の嫁取りと、このアナウンサー物語新鮮で楽しみー!
似たようなキャラと、共感できないキャラばかりでマンネリ気味だったから。。
2020/04/08 05:1144返信1件
No Name
女子アナのドロドロといえば、元TBSの小島慶子さんが書いた「わたしの神様」っていう小説がリアルで面白いです。電子でも買えるでしょうから自主隔離のお供にどうぞ。
2020/04/08 06:0230
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