2020.02.21
SPECIAL TALK Vol.65大病による離脱と復帰で、しがらみから解放された
金丸:さて、READYFORを創業されたあと、一度、大きな病気をされていますね。
米良:2年半ほど前に、DLBCLという悪性リンパ腫にかかりました。首元が腫れて、なんだかおかしいなと思って病院に行ったら、「喉頭ガンか、悪性リンパ腫か、陽性の腫瘍のどれかですね」と言われ、「え、3分の2はガンじゃん」って。
金丸:ショックだったでしょう。
米良:頭の中が真っ白になりました。まさか自分にこんなことが訪れるとは、みたいな。しかも病名がわかるまで、結構時間がかかったんです。その間はどんどん不安が募るばかりで、明日のことすらわからないのに、未来のことなんてまったく考えられなくて。だから逆に、病名がわかってからは気が楽になりました。
金丸:それは不安だったでしょう。経営も同じですよね。どこに問題があるかわからないと手の打ちようがないけど、課題がはっきりすれば解決方法を考えられます。
米良:本当にそのとおりです。病名がわかったのが、夜の9時だったんですけど、家に帰ったらすぐ、夫が知り合いの医師全員に電話で病気のことを聞いてくれました。「○○先生が有名らしい」とか「こういう治療法がある」とか、わずか1時間でいろんな情報収集ができましたね。
金丸:旦那さんも素晴らしい行動力です。
米良:最初はうろたえてましたけど。治すには手術だけでなく、抗がん剤治療も必要だったので、会社は7ヶ月ほど休みました。
金丸:でも復帰できて本当によかったです。米良さんは病気のことも含めて、人生のペースが早い。普通の人より早く起業して、早く事業を成功させ、病気になるのも克服するのも早いですね。
米良:29歳から30歳までが闘病期間でしたが、病気になったことで、自分が20代のときは常に焦っていたことに気づきました。「若いから」「女性だから」と持ち上げられている部分があることを自覚していたので、歳を重ねるたびに、自分がどんどん終わりに近づいていくような感覚があって。最初の志を忘れて、ただただ焦っていたように思います。
金丸:焦っても、何もいいことはありません。「あいつはもうできたのに、俺はまだだ」と考えるようになると、自分の潜在的な能力や価値を自分自身が低下させてしまうことになる。
米良:それまでは周りの期待を勝手に背負い込み、社会の定義やらに左右されていました。でも、「明日死ぬかもしれない」という状況になると、「今の自分を自分がどう評価するか」しかない。だから、自分がどう生きたいか、どう満足したいかだけを考えようと。
金丸:そうなったら、人は強いですよね。
米良:「好きなことをやろう」「得意なことをやろう」「苦手なことはどんどんみんなに任せよう」と思うようになりましたね。今では仕事でも「これ、私、できないからやって〜」みたいな、肩の力が抜けたコミュニケーションができるようになりました(笑)。
金丸:READYFORのメンバーに対しては、どのような思いがありますか?
米良:私が病気の間、みんな辞めずに会社を支えてくれたことは本当に感謝しています。それに、みんなに頼る部分は頼ると決めたことで、関係性がより良くなったのではと感じています。
金丸:創業社長だと、会社と自分が一体化してしまうことがよくありますよね。
米良:私もそうでした。私が頑張ると言い続けないと、みんな不安になるんじゃないかと、勝手に思い込んでいて。それが、いい意味で「もう全部どうでもいいや」と思えるようになりました。本当に望むことだけをピュアに言えるようになったし、そのおかげで、言いたいことが前よりも伝わりやすくなりましたね。だから、自分も会社も今が最高の状態です。
金丸:そう言い切れるのは、本当に素晴らしいことです。最後に、米良さんから同世代や若い人たちに向けてメッセージをいただけますか?
米良:私はもっともっといろいろな挑戦があふれる世界にしたいと思っています。クラウドファンディングなどの新しいサービスの登場で、挑戦することへのリスクはどんどんなくなりつつあります。大企業だからといって今後も長く続くかどうかわからない不安定な時代だからこそ、いろいろなことに挑戦する価値が高まっているんじゃないでしょうか。
金丸:大学生にとって、「就職する」「研究を続ける」と同じように、「起業する」という道が選択肢のひとつにある状況にしたいですよね。
米良:そうなれば日本も変わっていくはずです。私は自分が病気をしたことで、日本の社会保障制度が充実していることを知りました。だから事業がうまくいかなくて、本当に「やばい」という状況になっても、結構社会が助けてくれますよ。失敗を恐れずにどんどんチャレンジしてほしいです。
金丸:今日のお話を聞いて、米良さんに触発された若者が、クラウドファンディングを通じて挑戦してくれたら最高ですね。今日はお忙しいなかお越しいただき、本当にありがとうございました。
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