嘘 Vol.2

「彼女がいることは、隠さない・・・」部屋に女の私物をあえて置く、モテる男の策略

それは何の前触れもなく、訪れた。

いつものように、飲んだくれて家へ帰ると、珍しくスミレが俺の部屋で待っていたのだ。

「スミレ!!言ってくれればもっと早く帰ってきたのに」

そう言って駆け寄り、抱きしめようとした俺の腕を、スミレは静かに払いのける。

怒っているわけでも、笑っているわけでもない、無表情な顔がこちらをまっすぐに見つめている。

そこには、得体のしれない空気感が漂っており、一気に酔いが冷めた。

ふと目をやると、スミレのトートバッグには見慣れた部屋着や化粧品一式などの荷物が入っており、手に俺の家の鍵を持っている。そして、それを見て、一瞬で彼女の意図を察した。

「まじかよ…」
「さすがの私も、友也の女遊びは我慢できない…」
「女遊びなんてしてないよ!何を根拠に…?」

懸命に否定しようにも、それに対し一切反論する気のないスミレをみて、もうこれは手遅れだとわかった。

「じゃあ…バイバイ」

最後に少しだけ笑って、鍵を俺に渡し、彼女は去っていった。スミレの香水の匂いが、チクりと胸を刺した。


俺の部屋は、スミレの私物が回収されただけで、なんとも色気のない部屋になっていた。かなり飲んで頭は痛むのに、その光景に、再び目が冴えてしまう。

「女遊びは我慢できないって…」

そんなことで、スミレが別れを切り出すとは思わなかった。俺の女遊びを知ったとしても、てっきり割り切っているものだと思っていたから。

そもそも彼女は、たまにうちに遊びにくる程度だったし、会っていた頻度を考えると、正直、付き合っていたと言えるのかも怪しい。

だけど…。

「スミレ…」

ガランとした部屋の中、思わず名前をつぶやいてしまった自分に愕然とする。

気を紛らわせるため、冷蔵庫から缶ビールを取り出しまた飲み始めた。

気づけば、今から会えそうな女の子に連絡しようと、勝手に手が動いていた。

いつもいつも、刹那的な快楽を求める軽薄さに自分でも呆れるが、そんなことには気づかないふりをして、片っ端からLINEを送るのだった。


▶Next:2月5日 水曜更新予定
友也とスミレの別れを知り、舞い上がった紗英がとった行動とは

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この記事へのコメント

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No Name
えっと…初回どんな話だっけ?
2020/01/29 05:3099+返信2件
No Name
友也、結婚しても不倫するタイプだな…。芸能人じゃなくて良かったね!笑
2020/01/29 06:4984返信10件
No Name
智也は最低だけど、こういう人ほどモテるだろうなぁ〜。
2020/01/29 05:0950返信5件
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