嘘 Vol.2

「彼女がいることは、隠さない・・・」部屋に女の私物をあえて置く、モテる男の策略

恋人のスミレにLINEをしてから、1日以上連絡がない。

俺はマメなタイプではないが、鈍感なわけではない。ここんとこ、スミレが妙に距離を取り始めている気がする。柄にもなく、飲みの場でも、何度もスマホでLINEの新着を確認してしまう。

「でしょ、友也?」

紗英は俺に話しかけていたらしい。

「うん、確かに」
「やっぱり、そうだよね!」

適当に返した言葉は間違っていなかったらしい。どうやら、会社の先輩とやらの愚痴を話していたようだ。

キレイな顔でふくれっ面をする紗英に、全くそそられないかと言えば嘘になる。スミレとの距離感も相まってか、健気にアピールしてくるその姿に、心が傾きかけていることも否めない。



紗英と関係を持ってから半年ほどたった頃。

中途半端に時間を持て余し、暇つぶしがてら、彼女を連れてドライブに行ったことがあった。

「首都高から見るレインボーブリッジって、本当にきれい!!」

夜景が見たいという紗英のリクエストに応え、夜景スポットを巡る“いつもの”ドライブコースを走ると、想像以上に喜んでくれた。

助手席に乗る紗英の嬉しそうな横顔と、そのはしゃぎぷりを見ると、俺まで嬉しくなってくる。

真冬だというのに、膝上のスカートに薄いタイツ、きれいに塗られたネイルやほのかに嗅覚を刺激する香水からも、気合いの入れようが伺えた。自分とのデートに頑張ってお洒落してくる女の子をみて、どんな男も悪い気はしないだろう。

車内という密室で、そんな紗英からの熱っぽい視線を受け、すっかり彼氏気どりでドライブデートを楽しんでいた。

しかし、紗英の一言が、俺の脳内に黄色信号を点滅させたのだった。


「このまま友也の家に帰るでしょ?」

彼女気取りで、当たり前のように家に来られても困る。

「ごめん、…今日はこの後別の予定あって、また今度な」
「そっか、わかった…」

これ以上、下手にやさしくし過ぎると、あとで厄介になるかもしれない…。瞬時にそんな勘が働いたのだ。

昔、遊んでいた女性に、自分に恋人がいるとバレたことが何度かあった。彼女たちは、泣き、罵り、時に自宅まで押しかけてきた。自分としては、ただの遊びだったつもりだが、彼女たちは違ったようだ。

それからは、彼女がいることは隠さないようにしている。

紗英をうちへ誘うときも、スミレの私物は目のつくところに置いてある。だから、彼女もスミレの存在には気づいているはずだ。

下手に期待を持たせる行為は、あとで自分の首を絞めることになりかねない。

紗英が少し寂しそうな顔をするのを見ると、かわいそうに思えたが、これは、真面目に付き合う気がない俺からのサインであり、ある意味、俺なりの誠意でもあった。

この記事へのコメント

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No Name
えっと…初回どんな話だっけ?
2020/01/29 05:3099+返信2件
No Name
友也、結婚しても不倫するタイプだな…。芸能人じゃなくて良かったね!笑
2020/01/29 06:4984返信10件
No Name
智也は最低だけど、こういう人ほどモテるだろうなぁ〜。
2020/01/29 05:0950返信5件
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