「中の上が、意外とモテる」あえてトップを狙わない、メガバンク男の言い分

意外とモテる、中の上ポジション


「僕、見た目通り、昔から目立つタイプじゃないんですよ」

健太は、唐突にそう切り出した。

「厳密に言えば、平均よりちょっと上くらいかな?でも、身長もテストの点も徒競走も、全てが中の上なだけで、秀でる何かが何もなかったんです」

何に置いても中の上であるがゆえに、「みんなより出来ない」という劣等感を覚えることはなかったが、何かに得意意識を感じたこともなかった。

そして大人になるにつれ、それは「無個性」なのではないかと思ったこともあったが、特段気に留めなかった。

「“中の上“って居心地いいんですよね。トップやビリと違って注目もされないし、なんとなくうまく世の中を渡れちゃうんですよ。意外とモテたりもするし…。だから、結局“中の上”というぬるま湯ポジションに甘んじていました」

コンプレックスが強烈であれば強烈であるほど、それはエネルギーに変わりうる。しかし「中の上」という絶妙な立ち位置からは、「這い上がってやる」というよう熱意は湧き上がらなかったそうだ。

新卒でメガバンクに入社した後、神奈川にある支店の法人営業部に配属された。同期が何百人もいるようなマンモス企業においては、それこそ、落ちこぼれることもなければ、営業成績で秀でることもなかった。

「大学時代も、会社に入ってからも、気心しれた友人たちとバカ言い合いながら飲んだくれたり、それなりに可愛い子とデートできれば、それだけで十分幸せだったんです(笑)」

しかし、そんな平凡な日々を送っていた健太に、とあるできごとが起こる。

健太は入社した当初から、一般職の同期と付き合っていた。彼女は都内の支店で事務職として働いたのだが、そこに福岡から2つ上の先輩が転勤してきた。

非常に成績優秀な営業マンだったらしく、その仕事ぶりが彼女の目には格好よく映ってしまったようで、彼女はその先輩と付き合い始めてしまったのだ。

「内定時代から根気よくアプローチを続けてやっと付き合えた子なんですけど、入社して3年目にしてフラれてしまったんです…。恋愛でここまで凹むか、っていうくらい凹みましたね(笑)」

自分より仕事のできる先輩に彼女を取られてしまい、傷心中の健太だったが、ちょうどその時ある転機が訪れた。

「うちの支店で営業トップだった先輩が異動することになって、そのうちの一部を僕が引き継ぐことになったんですけど。その先輩、ちょうど大型案件の商談をしていて、タイミング的に、僕が担当になった直後に契約がまとまり、結果、それが僕の営業成績になったんです…!」

そしてこれが、健太が「中の上」から脱するチャンスとなった。

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