妻の年収が夫を超えた時。“男のプライド”を甘くみた女に訪れた、結婚3年目の危機

理想的な夫と出会うまで


「自分も会社員をしていたからわかるのですが、OLにとって通勤服は消耗品なんです。とにかくバリエーションが必要だから、トレンドをおさえながらも品が良く、それなりのクオリティで安いのが一番。だから、普通のOLさんでも買いやすい価格帯で、アラサー女性向けのお洋服を作りたいという思いがあって。

中国の工場は安価で取引可能ではあるのですが、そのぶんロットが膨大。大量に作り、売りさばかないと利益にならないので、認知度がない最初の頃は赤字続きで…」

昨今、個人でアパレルECを始める女性は少なくない。しかしその多くはもともとモデルやタレントをしていて、それなりに知名度があったりする。

萌は学生時代も特に読者モデルなどはしておらず、メガバンクに就職した普通のOLで、SNSのフォロワーが多いわけでもなかった。

「周りを見渡せば、自身の美貌と知名度を武器にして商売している同業者がいっぱいいて。小ロットで作った服を高額で売り、すぐに完売させてさらなる購買を煽る。そのやり方が間違っているとは思いませんが、自分にはできないことだから単純に羨ましくて。大量の在庫を目の前に、くじけそうになったのは一度や二度ではありません」

そんなわけで、立ち上げから数年は苦戦を強いられていたそう。

「メガバンクの同期・健吾と再会したのは、まさにそんなどん底の時期でした。これからどうしていくべきか、方向性を見失いかけていた時でしたね」

本当に偶然でした。いや、今思えば運命的なのかな(笑)。千代田線の車内でバッタリ会ったんですよ」

早朝から都内スタジオでの新コレクション撮影を終え、半ば意識朦朧としながら電車に揺られていた萌に、懐かしい顔が声をかけてきたという。

「彼は、取引先からオフィスに戻る途中だったそうです。退職してから一度も会っていませんでしたが、同期の噂話なんかで盛り上がったのを覚えています。誰が誰と結婚したとか…そんな話の流れで、彼がまだ結婚していないということも知りました」

会話をしていたのは電車が数駅を移動する間だけだったそう。

その場は「じゃあ、また」と別れた二人だったが、その日の夜、萌のスマホに彼から「飲みに行こうよ」と誘いのLINEが届いたらしい。

「健吾は昔からしっかりしていて、同期の中でもリーダー的な存在でした。気配りも完璧で、皆で集まる時なんかは必ず彼が幹事をしていた記憶があります。

後から聞いたら、数年ぶりに再会した時、私の元気がないことにすぐ気がついたみたい。それで放っておけずに私を誘ったそうです。根っから世話焼きなんですよね、彼」

この運命的な再会をきっかけに、萌と健吾はしばしば二人で会うようになり、自然な流れで恋人同士になったという。

そして3年前。萌はプロポーズを受け入れ、二人は晴れて夫婦となったのだ。

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