「変わったお味やね」京都に嫁いだ東京女を悩ませる、姑の遠回しな嫌味

「それからしばらくは、なんていうか疑心暗鬼になりました。もしかしてこれも嫌味?本音は別にあるの…!?って必要以上に勘ぐってしまって。いっときは、毎晩のように夫に相談したりもしていましたね」

郷に入れば郷に従えという言葉がある。七瀬さんとしても、京都に嫁いだからには京都に馴染まなければ…と自分で自分にプレッシャーを与えていたのだ。

しかし本音を探ろう探ろうと一生懸命になることに、ある時ふっと嫌気がさし、もうやめてしまおうと思うようになったという。

「京都の人たちの独特な言い回しを理解しようっていうのがそもそも無理なんだって悟ったんです。育ってきた文化が違うんです。理解できなくて当たり前じゃないですか。だから鈍感力っていうのかな、気づかないフリしとけばいいんだって。それも上手に付き合っていくためのスキルなんじゃないかって…考え方を変えました」

そして彼女は最後にこう言った。

「今でも義母は色々言ってきますよ。例えば…?最近よく言われるのは、七瀬さんは忙しないなぁ、って(笑)。多分、私が昼間好き勝手に出歩いていることを遠回しに非難しているんだと思うんですけど、気づかぬフリでやり過ごしてます。そのくらいの対応力はOL時代に身につけました。東京には、もっともっといろんな人がいましたしね」

そう言うと、七瀬は「うふふ」と悪戯な笑みを浮かべる。

そんな彼女の瞳には、“いけず”と名高い京女にも決して屈することのない、東京女のしたたかさが宿っていた。


―Fin.

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