「反抗期とかありませんでした」親との仲を自慢する男との結婚に潜む、意外な落とし穴

両親とうまくやれない女性とは、結婚できません


前回のインタビューで、妻・美咲は姑の過干渉に辟易している様子だった。

そのことに、和宏は全く気がついていないのだろうか。

「妻がどう思っているか、ですか?そうですね…子どもが生まれて母が家に足繁く通うようになった当初『お義母さんに、そんなに頻繁に家に来なくても平気だって伝えて』と言われたことはあります。柔らかい言い方ではありましたが、その表情から、あまり快く思っていないことはわかりました」

実は、妻の内心を察知していたという和宏。

しかしその後に続けた言葉は、そんな妻の本音を完全に無視する意見だった。

「一応、美咲に言われた通り母には伝えました。でも母はそもそも、むしろ孫に会いたくて来ていますから。

それに母が子どもの面倒を見ていてくれれば、妻だって助かるはずなんです。買い物も掃除も料理だってしやすい。

実際、母が来てくれている日は夕食が豪華です。どちらが作っているのかまでは、僕にはわかりませんが」

確かに、和宏の母に悪気は一切ないのだ。しかも母が頻繁に家に来ることで和宏自身もメリットを享受しており、苦言を呈してやめさせる理由がない、というのが彼の言い分である。

「そもそも…」と、和宏はまったく悪びれずに言葉を続ける。

「僕は美咲のことを一目で気に入っていたし、何度かデートをするうちに結婚のイメージもできたので、付き合って間もなく広尾の実家に招き、両親にも紹介しました。

そのとき彼女、言ってたんですよ。『すごく素敵な両親だね』って。『家族みんな仲が良くて、こんな家庭に憧れる』って目を輝かせていたんです。

それを聞いて、僕は結婚するなら彼女だって確信したんだ」

両親と友好的な関係を築けるかどうか。それがそもそも結婚の条件だったと語る和宏はさらに、こうはっきりと言い切った。

「僕の両親とうまくやれない女性とは、結婚できません。たとえその子がどんなに素敵であったとしても」

両親を心の底から尊敬している和宏は、10代の時でさえ反抗期という反抗期がなかったという。

「もちろん意見の食い違いや腹立たしいことは、今も昔もある。だけどやっぱり、自分がいかに恵まれた環境にいたかを考えたら感謝しかないわけです。

製薬会社を経営する父の成功で、幼少期からお金に困ったことはなく、習い事や塾、留学など質の高い教育はもちろん、高校時代の夏休みには幼馴染と世界一周旅行にも行かせてもらったり『やりたい』と言えば何でも経験させてもらえた。

自分が親になってより一層、親の凄さがわかります」

今の自分があるのは、親のおかげだと話す和宏。しかも長男であるゆえ、父が退いた後は自分が社長の座に就くことが決まっている。

実際、美咲と結婚し、新たな家庭を築くという段階においても、彼は二代目の特権に完全に甘えてしまっているのだった。

「結婚式の準備だって、式場選びや装花・食事メニューの選定、ゲストのリストアップに至るまでその全てがうちの両親が主導で行いました。その代わり、費用は全額負担してくれましたし。

両親が購入してくれた広尾のマンションに住んでますし。僕たちの収入だけでは到底無理なものを用意してくれるので、拒む理由はないですよね。

妻も喜んでいました。『カズくんの実家のおかげでいい生活させてもらえて、本当にありがたい』って。実際その通りです。実家の支援なしに、今の生活レベルは維持できませんから」

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