マルサンの男 Vol.11

「彼、ものすごい人数の女性と…」。交際7年目で女がようやく気がついた、男の罪深い行為

男も女も、誰だって恋愛しながら生きていく。

だから愛するカレには、必ず元カノがいる。

あなたの知らない誰かと過ごした濃密な時間が、かつて存在したかもしれないのだ。

愛するカレは、どんな相手とどんな人生を歩んでいたのか――?

幸せ未来のため、相手の過去を知ることは、善か悪か。

あなたは、愛する相手の過去が、気になりますか?

◆これまでのあらすじ

29才の南美は、6才年上の恋人・数也がプロポーズを考えていると知り、幸せの絶頂にいた。だが同時に、彼の2度の結婚歴が気になり1番目の妻・竹中桜2番目の妻・福原ほのかそれぞれと密会する。

しかし、その行動に気づいた数也から別れを告げられ、親友にも裏切られてしまうのだった。

さらなる追い打ちをかけるように、数也は3度の結婚歴があると判明。学生結婚した平木真穂とは交通事故で死別しており、遺族は数也への怒りを露わにした

数也の過去を知った南美は、本当の意味で決別することに…。


引っ越し当日を迎えた。

無慈悲にして優秀な業者は、数也との思い出や哀愁といったものを吹き飛ばすスピードで家具とダンボールを運び出し、あっという間に南美の部屋には何もなくなった。

この部屋に引っ越したとき、今度こそ最高のパートナーを作ろう、と決意したことを思い出す。

恋人の行動が心配になれば、すぐに彼のSNSをチェックする。浮気を疑えば、ベッドで寝ている彼の枕元のスマホを手に取る。ダメだと分かっていてもやってしまい、それがバレて次々に逃げられてきた。

でも、そこに数也が現れた。南美にとって二人目の「ちゃんとしたカレ」。

そんな数也には三人の妻がいた。

しかも交通事故で死別した最初の妻・真穂を忘れられないまま、数也は2回も結婚した。いずれの結婚相手にも、真穂のことを打ち明けないままに…。

南美もそのまま四人目の妻になるところだった。

―これで良かったんだ。

何もない部屋で南美は大きく息を吐いた。

―でもあの時は、こんな結末を迎えるとは思ってもいなかったな。

南美は数也との初デートを思い出す。

素敵な店。素敵な料理。素敵な会話。語彙が乏しくなるほどに楽しかった。

心が弾み、酒が進んだ。すっかり酔っ払って、この家まで送ってもらうことになった。

家に上がった数也だが、当然のように南美に手を出さず、軽いハグをしただけで帰っていった。

ひとりになってシャワーを浴びようとしたとき、お茶かコーヒーぐらい出さなきゃいけなかったと、南美は激しく後悔し、「あーっ!」とシャワールームで声を上げたことを今でもはっきりと覚えている。

次に、数也がこの恵比寿の家に足を踏み入れたのは、付き合ってからしばらく経ってからのこと。交際当初は南美のほうが、広尾にある数也の家に行くことがほとんどだった。

―忘れよう。もう全部、忘れなきゃ。

南美は、何もなくなった部屋に向かって一礼した。

「ありがとうございました。お世話になりました」

主を失った部屋に、南美の声が静かに響く。

部屋を出て、ドアを閉め、鍵をかけた――その時だった。

数也との初デートで、もうひとつ「後悔」があることを思い出した。お茶を出さなかったこと以上の「後悔」だ。

そしてそれは南美がずっと蓋をしてきた記憶でもあった。

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