「一刻も早く子どもが欲しいの」。地方暮らしに馴染めず、夫婦生活が破綻した妻のとった行動とは

彼女はまず、料理教室のコンセプトを見直すことにした。

実は浜松は、農業も水産業も発達した土地。浜松で獲れる野菜は種類豊富だし、浜名湖や遠州灘は美味しい魚介類の宝庫と言われている。

ちょっとした居酒屋なんかで食べるものも驚くほど美味しいことに気づいた有紗さんは、この土地の食材を活かした料理メニューを提案しようと考えた。

「といっても、家庭で簡単に作れるようなレシピです。浜名湖で大量に水揚げされたしらすを使ったアヒージョや、浜松でたくさん獲れるという、みずみずしい玉ねぎをたっぷり使ったクリームパスタとか。

この土地で暮らしている人は、普段当たり前のように食べている食材ばかりですが、“ここの教室で作る料理は、気軽に作れるけどすごく美味しい”って言ってくれるようになりました」

さらに彼女は、ワインの専門商社で働いていた頃の知識を活かして、お料理をしながらワンコインでグラスワインを飲めるサービスも始めた。

それがお酒好きの女性たちの間で大ウケし、加えて「東京から来た人がやっている、ちょっとオシャレな料理教室」として口コミが広がり、教室は軌道に乗ったそうだ。

徐々に変わり始めた浜松での結婚生活


それから約1年。今では、ご主人・悠人さんの同級生の妻たちも、お料理教室に多く通ってくれているのだとか。

「はじめは自分だけよそ者、なんて感じていたけど、今思えばすべて私の被害妄想でした。彼らは地元愛が強いだけで、東京から来た私をのけ者にしようなんて考えはなかったのに。東京出身であることに変なプライドを持っていたのは、私の方でした。

自分から心を閉ざして馴染めなかっただけなのに、なんでもかんでも、夫のせいにして、この土地のせいにして。そんな考えじゃ、たとえどこの地方に行ってもハッピーになれないですよね。自分の幸せは、自分で切り開く。それが“やらまいか精神”なんだなって思います」

そう言って微笑む有紗さん。いつのまにか、目の前のうな重をペロリとたいらげている。

「あ、ところで知ってます?こっちの人って、うなぎはそんなに頻繁には食べないらしいですよ。うちの夫も年に2回くらいですって」

ちなみに、ぎくしゃくしていたご主人とも、今では以前のように仲の良い夫婦として再スタートを切ったという。

そんな彼女の今後の楽しみは?と聞くと…。

「“浜松まつり”ってご存知ですか?毎年ゴールデンウイークに開催される大きなお祭りです。浜松の人たちは本当にこのお祭りが大好きで、熱狂的とも言えるほど。

お祭りの趣旨は、子どもの誕生を祝うことなんですよ。…私たちも子どもができたら、絶対に浜松まつりでお祝いをしようって楽しみにしています」

彼女はすっかり、浜松に溶け込み、馴染んでいるようだ。

きっとこれからもここでの暮らしを満喫していくのだろう。有紗さんの表情は清々しく、どこか自信に満ち溢れていた。


▶Next:11月10日 日曜更新予定
次号は番外・海外編!東京妻がシンガポールに住んでみたら・・?

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